“移民”解禁で仕事を奪われる「プアー・ジャパニーズ」は出現するか:岐路に立つ日本社会(5/5 ページ)
4月から外国人労働力の受け入れが拡大。事実上の“移民解禁”とも言える流れに。将来、日本人の仕事が奪われることになる?
日本人の雇用確保を ただし年功賃金維持は困難
日本自動車工業会会長を務める豊田章男・トヨタ社長は、5月の自工会総会後の懇親会で、「このまま国内生産が減ってしまうなら、雇用は守れなくなる」と発言した。ちなみに、自動車関連の雇用は、500万人以上と規模が大きいため、発言のインパクトも強烈だ。
平成初期には、日本の自動車産業全体の連結売上高は約30兆円で、国内の売上高が約24兆円と8割を占めていた。ところが、18年度は連結が約75兆円に対し国内は30兆円と構成比は4割。海外市場に依存しているのである。
人手不足から隠れているが、日本のモノ作りも雇用も危機的な状況にある。それだけに、外国人の活用による国内のモノ作りの再強化は急務なのだ。
ただし、社会の安定のためには日本人の雇用確保は欠かせない。”プアー・ジャパニーズ”を失業者やニートにしてはならない。そのための前提が経済成長の継続であるのは言うまでもない。多少の不満はあっても、最低限の雇用が維持されて、毎月の給料を得られるなら暴動は起こらないはずだ。胃袋が満たされれば、人は無茶をしない。
現実として、日本企業は米国企業のようなレイオフ(一時解雇)はできない。工場なら、優秀な移民が最終検査などの重要な工程を担い、パフォーマンスを発揮できない(あるいは発揮しようとしない)プアー・ジャパニーズは、バックヤードなどの重要でない仕事に配置転換される形となろう。その場合、年功賃金はもはや無理だ。職で賃金が決まる職務給の運用にどこまで迫れるかなどがテーマになっていく。もちろんプアー・ジャパニーズ、プアー・フォリナーの再生のための再教育も求められる。
波風は必ず発生する。しかし、外国人とともに働いていく、内なるグローバル化はもう止めることはできない。止めたなら、多くを失ってしまう。
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