“絶体絶命”のファーウェイ、「伝説の創業者」のDNAに見る“それでも強気な理由”【後編】:いかにして「苦境」を乗り越えてきたか(2/5 ページ)
米国の制裁に揺れる中国通信機器・端末大手のファーウェイ。絶体絶命の窮地に追い込まれたかに見える一方、創業者の任正非(じん せいひ)を筆頭にファーウェイ関係者は強気な姿勢を崩さない。
デジタル交換機への挑戦
社運を賭けた新製品が失敗した。存亡の危機に立たされたファーウェイだが、この危機も技術によって克服すると決めた。デジタル大型交換機の開発だ。しかしそれは深センの片田舎にある小企業が世界的大企業と互角の土俵にあがるという、厳しいチャレンジだった。
JK1000にしても中国の大都市部での採用を狙ったものではない。当時の中国電話網は「七国八制」と呼ばれ、日本のNECと富士通、アメリカのルーセント・テクノロジー、米国のアルカテルSA、スウェーデンのエリクソン、ドイツのシーメンスなど世界の大企業が“瓜分(編注:(強国が弱小国の領土などを)分割すること)”する戦国時代だった。
世界の強豪たちが取りこぼした農村の基地局をターゲットにするのがファーウェイの「鶏肋戦略」だった。鶏肋とは鶏の肋骨の意味。『三国志』の曹操のせりふとして知られ、「大して役には立たないが、捨てるには惜しい物」という意味になる。
デジタル交換機の開発は強者たちの土俵に上がることを意味する。それでも任はひるまず、企業の生死を賭けた開発に挑んだ。残った資金の全てが投入された、まさに最後の大勝負だ。開発成功前にファーウェイ営業部は契約を獲得し、浙江省義烏市の基地局が最初の納品先と決まった。
当初は93年6月には製品を納入するという手はずだったが、開発は終わらない。10月になってテスト品のような状態で運び込んだ。開発スタッフが現地に泊まり込み、客先で開発するというデスマーチが続いた。2カ月にわたる悪戦苦闘の末、ついにデジタル大型交換機「C&C08」は稼働した。
80年代以降、中国には無数の交換機輸入業者、国産メーカーが大量に出現した。しかしデジタル交換機の開発に成功したのは4社だけだ。それが巨龍通信、大唐電信、中興通訊(ZTE)、華為(ファーウェイ)の4社だ。この4社は「巨大中華」と総称され、中国交換機市場を牛耳る存在へとのしあがっていく。
巨龍通信と大唐電信は政府の支援を受けた国策巨大企業である。彼らはその後没落する。一方、自力で最先端技術にチャレンジしたZTEとファーウェイの2社は、世界的通信機器メーカーへと成長していくことになる。
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