ワークマンの大ヒットは、「安いのに高機能でオシャレ」だからではない:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
ワークマンの勢いが止まらない。今年4月の国内店舗数はユニクロを超え、売上高も大幅に伸ばしているのだ。同社の成功要因として「激安なのに高機能でオシャレ」といった指摘が多いが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
「パイオニア」は他にもいる
という話だけを聞くと、「ははあん、ワークマンの大ヒットに便乗したいわけね」とか思う人もいらっしゃるかもしれないが、「Z-DRAGON」が生まれたのは15年。しかも「JAWIN」に至っては08年。ワークマンが現在のようなPB商品開発に参入する以前からあって、テレビCMではまだ吉幾三さんが「行こう、みんなのワークマン」と歌っていた時代だ。
さらにさかのぼっていけば、「パイオニア」は他にもいる。やはり広島で1901年に備後絣問屋として創業して、現在まで118年の歴史を誇る老舗作業服メーカー「コーコス信岡」だ。
イケメン・美女たちがモデルを務める「電子カタログ」を見ていただければ分かるように、同社の製品も「作業服」という言葉とかけ離れたシャレオツぶりで、「女性にも大人気! 累計販売点数282万点の大人気商品」(カタログ)だという吸汗速乾ポロシャツ・Tシャツをはじめ、「WORKMAN Plus」で売っていてもおかしくないような商品が豊富にそろっているのだ。
では、全国各地のホームセンターに製品を供給している同社が、いつからそのようなワークマン路線へ進出したのかというと、今から25年も前のことだ。
「同社は昨年から今年にかけ、カジュアル色の強いユニホームやスポーツウエア、アウトドア用ウエアを投入、個人消費者のニーズにも対応した品ぞろえを強化してきた」(日経産業新聞 1995年9月20日)
ここまで言えばもうお分かりいただけただろう。絶好調ワークマンを語る際に、メディアや評論家が嬉しそうに語っている「プロ向け作業着の品質を生かして激安なのに高機能でオシャレ」というのは、別にワークマンが最初に考えたことでもなんでもない。むしろ、作業服業界的にはかなり昔から、どこでも当たり前のようにやっている「一般客獲得戦略」なのだ。
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