ワークマンの大ヒットは、「安いのに高機能でオシャレ」だからではない:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
ワークマンの勢いが止まらない。今年4月の国内店舗数はユニクロを超え、売上高も大幅に伸ばしているのだ。同社の成功要因として「激安なのに高機能でオシャレ」といった指摘が多いが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
「インフルエンサーマーケティング」に力
という話をすると、「他の作業服メーカーと違ってワークマンはデザインがいい」とか「ワークマンが一番機能性が高い」とかなんだという方向へもっていきたい人もいるだろうが、これまでご紹介したメーカーの製品を実際に手にとってご覧になっていただきたい。
みな現在のトレンドを意識した今風のデザインで、カラーも豊富にそろっている。機能面も折り紙つきで、それでいてしっかりと価格も抑えられている。ワークマンの製品と比べても決して遜色はない。中には、デザインやコスパ的にはワークマン以上というものも散見される。
製品的にはそこまで大きな差はないメーカーが群雄割拠する中で、1社だけがポコンと頭を飛び出した。どうしても世間的には「製品」に注目が集まるので、とかく成功を「製品」に結びつけたがる。
が、ちょっと冷静に考えてみれば、製品にはそこまで大きな差がないのだから、その1社は他のメーカーがやっていない独自の取り組みをしていたはずである。その何かが「差」を生じさせたと考えるのが自然だ。つまり、ワークマンがここまでの大成功を収めることができたのは、「プロ向け作業着の品質を生かして激安なのに高機能でオシャレ」ではなく、もっと別の要因があるのだ。
では、それは何か。筆者は「マーケティング」ではないかと思っている。
ご存じの方も多いかもしれないが、ワークマンはいわゆる「インフルエンサーマーケティング」に力を入れている。16年9月、初めて「ブロガー向け商品説明会」を開催。「ブログで商品を紹介することが参加条件で、ブログは開設から半年以上経過し定期的に更新されている必要がある」(日本経済新聞北関東版 2016年8月19日)という条件を満たした100名ほどのブロガーを招待した。
18年からはブロガーという呼び方はやめて、「インフルエンサーの皆様」に対して、秋冬新商品発表会を説明している。
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