ワークマンの大ヒットは、「安いのに高機能でオシャレ」だからではない:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
ワークマンの勢いが止まらない。今年4月の国内店舗数はユニクロを超え、売上高も大幅に伸ばしているのだ。同社の成功要因として「激安なのに高機能でオシャレ」といった指摘が多いが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
「フィードバック」がしっかりと機能
このようなイベントはファッションブランドでは「常識」だが、作業着メーカーからすればかなり「異例」であることは言うまでもない。一般消費者向けを拡大したいという思いはあるが、やはりメインターゲットは、現場で働く「プロ」だ。彼らはユーチューバーやインスタグラマーが紹介したからという理由で商品を選ぶわけではなく、実際に店頭で手に持って、強度を確かめ、試着して動きを見るというのが一般的なのだ。
だが、そんな「異例」なことをワークマンはしれっとやってのけている。なぜかというと、組織外の人々から大きな「気付き」を与えられたからだ。
「同社は過去にも雨具がバイク向けに活用できるとネットで話題になり、オンラインストアのアクセスが急増するなど反響があった」(同上)
バイカーたちが集うネット掲示板で「この価格で、この機能はヤバい」なんて感じで絶賛され、口コミで人気に火がついた、というわけなのだ。
マーケティングに必要な情報は、自分たちの組織にはない。「外」の世界から得た情報を取り入れて、組織が学習をしていくか、つまりフィードバックしかない、とドラッカーは説いた。ワークマンはこの雨具がバズったという「想定外」の出来事をフィードバックして、自分たちの強みを理解した。
それが現在のような、「インフルエンサーマーケティング」につながり、並み居るライバル会社たちから頭ひとつ飛び出す原動力につながったのではないか。
もちろん、全ては筆者の勝手な想像に過ぎない。が、ワークマンという会社が「外」の世界から得た「気付き」をフィードバックすることができる組織だということを示す、動かぬ証拠がある。
それは「賃上げ」だ。
関連記事
- なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 築46年なのに、なぜ「中銀カプセルタワー」に人は集まるのか
新橋駅から徒歩5分ほどのところにある「中銀カプセルタワービル」をご存じだろうか。立方体の箱がたくさん積まれていて、丸い窓が並んでいる。1972年に建てられたこのビルが、数年前からジワジワ人気が出ているのだ。その謎に迫ったところ……。 - えっ、炊飯器じゃないの? 三菱電機の高級トースターが面白い
三菱電機が高級トースターを投入する。この市場を見ると、バルミューダ、アラジン、シャープなどたくさんの商品が並んでいるが、三菱のトースターはどのような特徴があるのか? パッと見たところ、小さな炊飯器のように……。 - 人手不足は本当に「悪」なのか 騙され続ける日本人
人手不足が原因で倒産する企業が増えているようだ。東京商工リサーチのデータをみると、前年度から28.6%も増えて、過去最高を更新している。数字をみると、「人手不足=悪」のように感じるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。 - “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - 作業服のワークマンが、新たな市場をつくりそうな理由
作業服などを販売している「ワークマン」が、ららぽーとに出店する。ワークマンといえば建設現場で働く人が利用しているイメージが強いが、ショッピングセンターでどのような店舗を展開するのか。同社の担当者に勝算を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.