首都圏の新線計画、生活者に必要なのは?:都市住民の利便性(2/4 ページ)
新線計画はメディアで取り上げられることが多い。「都市の国際競争力を高めるもの」として計画を進めようとしているが、生活者に必要なものなのか。首都圏の計画をみると……。
都市住民の利便性を確保するために
同様に地域住民の利用を想定した新線計画は、「常磐新線の延伸」と「都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備」である。つくばエクスプレスを東京駅まで延伸し、さらにそこから豊洲のタワーマンションエリアを経て、東京ビッグサイトに向かうというものである。
豊洲のタワーマンションエリアは、都心に近い住宅街でありながら、いまいち公共交通が不便であり、都バスの利用者も多い。今後もこのエリアに多くの住民が集まることを想定し、鉄道の整備は必要とされる(鉄道以外の社会資本の整備も必要である)。
そういった都市住民の利便性を確保するために、この新線は必要とされる。
よく話題になる蒲田と京急蒲田を結ぶ「蒲蒲線」には、空港アクセス鉄道とは別に、大田区エリアで鉄道ネットワークをつくるという裏の目的もある。大田区は、東急やJRで結ばれているエリアと、京急で結ばれているエリアがあり、その双方を結ぶのはバスしかない。そこで蒲田と京急蒲田を結び、地域間の交流を密にしようという狙いがある。
実際、「蒲蒲線」を空港アクセス鉄道にしようとすると、難題が多い。3両編成の東急多摩川線に東急東横線方面からやってくる長編成の車両を入れるという問題や、京急蒲田より先の大鳥居で京急空港線にアクセスしても、東急と京急は軌間が異なるという問題もある。地域間を移動するために必要なのかもしれないが、空港アクセス鉄道として存在するためには、いじらなければならない箇所が多すぎる。
現実的な可能性としては、3両編成の東急多摩川線・池上線の蒲田駅を地下化し、そこから京急蒲田・大鳥居まで達するようにして乗り換えてもらう、といったところが落とし所だろう。
では、「国際競争力」の観点から早期に手をつけるべき空港アクセス鉄道関連の計画はどこなのか。そしてそれは「生活者」のために役に立つのか。
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