首都圏の新線計画、生活者に必要なのは?:都市住民の利便性(3/4 ページ)
新線計画はメディアで取り上げられることが多い。「都市の国際競争力を高めるもの」として計画を進めようとしているが、生活者に必要なものなのか。首都圏の計画をみると……。
空港アクセス鉄道、早期に手をつけるべきなのは
JR東日本は現在、羽田空港アクセス線の環境アセスメントに着手し、事業化のために着々と準備を進めようとしている。だがこの計画には時間がかかる。
一方で、規模の大きくない範囲で空港アクセス鉄道に関する計画も動いている。「京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設」だ。京急空港線の羽田空港国内線ターミナル駅は、1面2線の配線となっており、そこで折り返すという形になっている。だが運転が混乱したときや、本数を増やしたいときには現在の配線では限界となっており、引き上げ線(折り返しなどのために一時的に列車を引き上げておく線路のこと)を設ける形でさまざまな処理を行いやすくする必要がある。
JR東日本の遠大な計画よりも、こちらを優先させるべきではないか。
また、京急の羽田空港国内線ターミナル駅の計画が実現する際には、品川駅の負担も高まることになる。こちらについても、2面4線化が検討されている。
品川駅の2面4線化は現在工事の計画が進んでおり、羽田空港の引き上げ線が完成した際には、羽田空港への列車の本数も増加し、利便性も高まることだろう。こういった「改良」こそが、多くの人に役立つ鉄道計画であり、実現可能性も高いと考えられる。実際、羽田空港へ行くのに、京急を利用したアクセスは多くの人に支持されているので、こちらを強化することが「生活者」のための差し迫った課題ではないだろうか。
生活者のための鉄道計画、主に通勤電車に関する計画は「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として答申に記されている。その中には、実現に近づいたものもある。
あざみ野〜新百合ヶ丘間の「横浜3号線の延伸」だ。先日、2030年度をめどにこの区間がブルーラインの延伸区間として開業することになり、準備が進められている。横浜市は面積が広いのに、私鉄各社が東京都心に向かって路線を設けたため、市内、あるいは横浜市と川崎市の移動が不便、という現実がある。この問題に対応するための鉄道計画として、重要なのだ。
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