「ココカラスギモトキヨシ」は誕生するか? コスモスの“東上作戦”で深まる混迷:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
ドラッグストア業界の再編が加速している。ココカラを巡りマツキヨとスギが争う形になっている。“東上作戦”進めるコスモスとイオンの存在も無視できない。
マツキヨらしい化粧品特化型店舗
19年3月決算によると、ココカラの売り上げ構成比は医薬品が31.1%(一般用医薬品14.7%、調剤16.4%)、化粧品は30.2%となっている。実際はインバウンドの売り上げが多く、化粧品に強い。一方で、前年からの伸び率が最も高いのは調剤で、7.3%増となっている。調剤報酬額といった調剤部門の指標でトップクラスであることを、公式Webサイトでもうたっている。
マツキヨと提携すれば、インバウンドをさらに伸ばせる可能性がある。マツキヨの19年3月決算によると、売り上げ構成比(小売事業)では化粧品が41.1%を占め、医薬品の31.8%を大きく上回っている。前年からの伸び率も化粧品が4.7%増と最も高く、医薬品の2.8%増を上回っている。
マツキヨの実態は、主流の化粧品店に薬局が併設されたビューティーショップである。17年6月、銀座中央通りに出店した「BeautyU」はインバウンド向けにコンサルティング販売を強化した化粧品特化型のマツキヨらしい店である。
これに、ココカラのヘルスケアのノウハウが加われば、若い女性ばかりでなく高齢者の顧客も増えて、都市型ドラッグストアとしては盤石といえるだろう。
横やりを入れたスギ
ところが、6月1日、今度はココカラとスギが経営統合に向けて検討及び協議を開始したことが発表された。
スギは、ウエルシアやツルハが規模の拡大のためにM&Aを仕掛けているのとは対照的に、M&Aには消極的とみられていただけに、驚くべき発表であった。
しかも、ココカラがマツキヨと進めていた資本提携から一歩進めて、いきなり経営統合を提案してきたのである。言葉は悪いが、“同棲”を協議していた横から割って入って、“結婚”しようと言い出したように見えなくもない。また、ココカラは「同棲もいいけど結婚もいい」と、公然と二股をかけてきたとも取れる。
スギは名古屋を拠点にしており、関東、中部、関西に1190店舗を展開(19年2月末現在)。そのうち、調剤併設は833店と7割に上る。また、477店で在宅調剤を実施している。ココカラの調剤は292店なので、トータルヘルスケアの方向性は両社で一致しているが、スギがかなり先行している。
スギは車社会の名古屋を基盤としているので、郊外型に強い。しかし、都市型のインバウンドに対応した店舗を東京の新橋駅前につくっている。化粧品販売のノウハウも、もっとほしいのが本音だろう。ココカラは都市型店舗中心で、しかも化粧品に強く、合併した場合のシナジー効果は極めて高いと期待されている。
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