ピアプレッシャーという“病巣”――「休暇制度の充実」だけでは働き方改革を実現できない:「無制限の有休」は奏功しなかった(5/5 ページ)
4月から施行された働き方改革関連法案によって有休が義務化されるなど「休暇制度の充実」が進んだ。一方、米国では期待されていた施策である「無期限の有休制度」が廃止されつつある。その背景にあるのは、同僚からの圧力「ピアプレッシャー」だ。
「ブランクを作らない」は産休・育休に限らない
今回は近年充実されるようになってきた産休・育休制度を中心に話を進めたが、休暇制度という枠で見ればこれらに限らない。先に挙げた、介護を必要とする家族を支えるための休暇もあれば、社員の家庭の事情を考慮した休暇制度も存在する。そうなると、ワークとライフの「ライフ」を支えるために、休暇制度以外の支援手段はあるはずだ。
社員の事情によっては精神的なサポートや何かしらのサービスを必要とするかもしれない。仕事と私生活の境界線が曖昧になりつつある今日、企業による社員へのサポートは、カバーする範囲が限りなく広い。オフィスであらゆる人生相談に乗ってくれるカウンセラーが常駐していたり、社員のために週末の旅行プランを計画してくれるカウンターがあったりするのは、全て社員の生活を豊かにするためだ。
ワーク・ライフ・バランスという言葉にある通り、社員が仕事と適切な距離感を保つことが昨今の働き方の課題だ。それは仕事ばかりにならないという意味である一方、仕事から離れすぎてはいけないという意味でもあるだろう。休暇制度のみに頼らずにワークとライフを充実させる方法として、どのような福利厚生制度があるべきか。今、日本企業の腕が試されている。
著者プロフィール
生駒一将(いこま かずまさ)
株式会社フロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネジャーを務めた経験をもとにオウンドメディア「Worker's Resort」を通して、海外のオフィスデザインや企業文化、働き方のトレンドなど、働く人を軸にオフィスのあり方を調査・発信中。『徹底研究!!GAFA』(洋泉社)などにて多数寄稿あり。
関連記事
- ひろゆきの提言(1)――「1人産めば1000万円支給」で少子化は解決する
ひろゆきこと西村博之氏が、令和時代を迎える日本が今後どんなふうにヤバくなるのか、沈みゆく日本で生き抜くためにはどうしたらいいのかを3回にわたって提言する。第1回目は少子化問題について――。 - 「人類最強のメモ術」を教えよう――発達障害乗り越えた「世界的ベストセラー作家」を直撃
「バレットジャーナル」と呼ばれる箇条書きを使ったノート術に注目が集まっている。発案者のライダー・キャロル氏は、発達障害を抱えながら、自らの思考を整理するためにこの手法を生み出した。なぜバレットジャーナルは世界の人々に受け入れられているのか。ライダー氏に話を聞いた。 - 非正規社員もボーナスがもらえる? 賞与と各種手当を取り戻す「正当な手順」
6月に入り夏のボーナスシーズンが到来。非正規社員にとってボーナスは縁遠い存在だったが、その常識を覆す判決が大阪高裁で下された。賞与や各種手当を取り戻す正当な方法と手順とは? - フリーアドレスはもう古い 働き方を根本から変える「ABW」の破壊力
欧米の企業が相次いで「アクティビティー・ベースド・ワーキング(ABW : Activity Based Working)」という勤務形態を導入している。簡単にいうと、仕事の内容に合わせて働く場所を選ぶ働き方だ。ABWの創始者であるオランダのコンサルティング会社のマネジャーに、日本企業が働き方を変えて生産性を高めるためのヒントを聞いた。 - 自由な働き方を実現させる最終兵器 「ABW」は日本で根付くのか?
最近、欧米の企業が相次いで導入し注目を集めている勤務形態「ABW (Activity Based Working)」。仕事の内容に合わせて、好きな時に、好きな場所で働く、この働き方は日本で根付くのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.