スープラはBMW Z4なのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
スープラ/Z4共同開発企画の原点は、トヨタにあった。そして、特徴的なディメンジョンを決め、開発にGOサインが出てからは、スープラとZ4はそれぞれ独自に開発を進めた。共通基盤を開発してからは、それぞれの理想とするクーペとオープンカーを作るために完全に交流を絶って、それぞれが理想とするクルマを作った。スープラのチーフエンジニアが語る、開発インサイドストーリー。
分かれ道
ここから、実はチームを2つに分けました。お互いさよならです。Z4を開発するチームとスープラを開発するチームに分けたんです。トヨタチームはBMWの近くにスタジオを借りて8人が常駐して開発を始めました。聞くところによるとBMW側も社内で開発スペースが取れなくて、クルマで40分くらい掛かるところで開発をしていたらしいです。
もちろんデザインも性能開発も別、クルマの全体のセッティングを決めるマスタードライバーも別です。スープラは、トヨタのレジェンドテストドライバーだった故・成瀬弘の最後の弟子の1人、トヨタモーター・ヨーロッパのテストドライバー、エルヒー・ダーネスが担当しました。BMWとは、ダーネスがスープラのセッティングを全て決められるという契約にしました。足回りも、エンジン、トランスミッション、デフ、ボディの剛性配分も全部です。
チームを分けて以降、私も開発途中のZ4を見たり乗ったりしたことは一度もありません。もちろん逆も同じです。最後にクルマが出来上がってから、「Z4に乗ってみるか?」と言われて乗ってみましたけどね。
そうはいっても、実際に仕事を進める中では、BMW側からいろいろ注文が付くのかと思ったら、そういう注文は全然ありませんでした。
基本的なディメンジョンと使うエンジンとミッション、ダンパーの形式みたいなものは最初から2社共同で決めているんです。それは共同開発の部分です。けれども、エンジンだとかミッションだとかの制御を含めたどういう走りに仕上げるのかは完全に自由にやりました。
86/BRZの時と大きく違うのは、86はできるだけ同じ部品を使い、仕様を揃えることで、台数の売れないスポーツカービジネスのハードルを下げることが目的でした。できるだけ変えないこと自体がある意味目的だったのです。
実は私は当初、今回のスープラ/Z4もそういうことだと思って、話し合いを始めました。ところが彼らから「いや、そんなことで本当に自分の作りたいクルマが作れるの?」と言われました。それが意味するのは「作りたいものを明確にしてから、共通で行ける部分を模索しよう」という話で、共通部品を前提にクルマを作る話じゃないんです。
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