スープラはBMW Z4なのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
スープラ/Z4共同開発企画の原点は、トヨタにあった。そして、特徴的なディメンジョンを決め、開発にGOサインが出てからは、スープラとZ4はそれぞれ独自に開発を進めた。共通基盤を開発してからは、それぞれの理想とするクーペとオープンカーを作るために完全に交流を絶って、それぞれが理想とするクルマを作った。スープラのチーフエンジニアが語る、開発インサイドストーリー。
競争と協業の時代
こういう流れで、スープラとZ4は世に生まれ出たのだ。
最後に、話を総括しよう。共同開発を持ちかけたのはトヨタ。そして2社でケイマン/ボクスターをロールモデルにして、それと十分戦える基礎としてのウルトラショートホイールベース、ワイドトレッドのシャシーを共同で考えた。それぞれの作りたかったクルマはスープラとZ4で、特異なディメンジョンのベースシャシーによって両社が望む性能が得られることが確定できた。
エンジン、ミッション、サスペンション形式は共通。それは工数とコストを下げるために当然だ。そこを変えたら共同開発の意味はない。もちろんエンジンやミッションの制御は全く違う。一例を挙げれば、大量のハイブリッド販売でCAFE規制を余裕でクリアしているトヨタは、スープラの開発に際して、燃費の制約は何もなかったが、BMWはZ4も例外なく頑張らないとCAFE規制をクリアできない。ということはエンジンやトランスミッションの制御プログラムも当然別になるはすである。
共通基盤を開発してからは、それぞれの理想とするクーペとオープンカーを作るために完全に交流を絶って開発し、自分たちの想いでクルマを作った。同じシャシーとエンジンを使うなら同じクルマだという乱暴な理解の人には分からないだろうが、同じ素材を使っても出来上がりは違うものになる。それは当たり前の話だ。同じレシピを見て作っても全く同じ料理にはならない。むしろ全く同じものを再現しろといわれる方が難しい。
トヨタとBMWがそれぞれ違う目的地への旅をする時、途中までルートが同じだった。ただそれだけの話である。
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