NZ産のキウイは「アゲアゲ」なのに、なぜ国産は「サゲサゲ」なのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「キウイ食って アゲリシャス アゲリシャス♪」といったメロディーを耳にした人も多いのでは。ニュージーランド産キウイを扱っているゼスプリのCMである。スーパーなどでニュージーランド産のキウイをたくさん目にするようになったが、なぜこうした現象が起きているのか。背景に……。
国産キウイはサゲサゲ
この近年のキウイ人気を、ゼスプリとして指をくわえて見ているわけにはいかない。ということで、アゲアゲで輸入数を増やしたところ、これまで店頭になかった時期まで溢れることとなり、結果的に国産キウイがサゲサゲになったというわけだ。
このように書くと、「国産キウイが売れないのは、消費者が魅力を感じないからであって、ニュージーランド産キウイのせいにするのはお門違いだろ」と思う方もいらっしゃるだろうが、筆者も全く同感である。
国内キウイ農家を守るため、ゼスプリはもっと遠慮しろなんてことを主張するつもりはサラサラない。というより、ゼスプリはずいぶん前から愛媛など国内契約農家で国産キウイも生産しているので、国内キウイ農家も支えてくれているのだ。
だったら、なぜ「アゲリシャスなどと踊っている場合ではない」などと述べたのかというと、「やっぱキウイはニュージーランド産だな」で済ますのではなく、なぜ国産キウイがゼスプリにかなわないのか、という理由をしっかりと分析をする必要があると強く感るからだ。
農林水産省の「果樹をめぐる情勢」(平成31年1月)によれば、国内キウイの栽培面積は2180ヘクタールと、全果実の中で14位だが、生産額では100億円とトップ10入りしている。みかんと一緒に生産している農家も多い。北は山形から、南は大分まで25の都府県で生産されている。
1960年代に持ち込まれてから、日本でもそれなりにキウイはつくられてきたのだ。味だって悪くない。さぬきゴールド、東京ゴールドなどいろんな品種がある。しかし、今やキウイとくれば、ニュージーランド産、つまりはゼスプリとなっている。冷静に考えてみると、これはかなり不思議な話ではないか。
バナナのように日本での生産が難しいのなら、輸入品が幅をきかせるのは分かるが、キウイは日本のかなりの地域で生産できる。現に、もともとの原産国である中国はキウイ生産量世界一で、二位は日本とそれほど気候の変わらぬイタリアである。なぜ自分たちでも生産できるものを、ここまでニュージーランド産へ依存することになったのか。
半分に切ってスプーンで食べるスタイルを編み出すなどマーケティングに長けている。アゲリシャスみたいなインパクトのあるCMで知名度をあげてきた。など、いろいろな意見があるだろうが、ニュージーランド産キウイの勝因に、「国産キウイよりも安くてうまい」ということがあるのは間違いない。先ほどの『日本農業新聞』の記事でも、国産キウイは1割ほど高いと記されている。
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