人事部は、AIによって消滅するか?:付き合い方(2/4 ページ)
組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する。
三つ目は、AIに勝てなくなったからといって、将棋界や棋士たちの価値が低下したわけではないということだ。むしろ、将棋界は(藤井聡太七段のブームを差し引いても)非常に盛り上がりを見せており、棋士たちには将棋を指さないファンも(”観る将”という)たくさんついている。「叡王戦」という新しいタイトル戦が誕生するなど新棋戦もでき、女流棋界もこれまでにない人気である。AIを使った将棋ソフトが登場したころ、「負けたらプロ棋士の存在意義がなくなるのではないか」「棋士という仕事がなくなるのではないか」、などと言われていたのがウソのようである。
これは、プロ棋士の価値が、単に「将棋が強い」ということではなかったことを意味している。価値はやはり、人間同士の戦いにしかない魅力である。両者の戦歴や関係、得意戦法や棋風や駆け引き、勝負におけるミスや運の存在などに加え、所作や服装や表情などから食事(昼・夜に何を食べるか)に至るまで、生身の人間が繰り広げる戦いの過程と、戦う姿の魅力が棋士の価値となっている。AI同士の戦いにこのような魅力はない。AI同士の戦いの方に惹かれるのは、将棋ソフトの開発者や関係者くらいだろう。AIの登場によって、棋士が自らの価値に改めて気づいたという面もあるように感じる。ファンが期待する、棋士のありようというものを自覚できた。将棋界の盛り上がりは、ファンからの期待を棋士が自覚し、実践した結果であり、それはAIのおかげとも考えられる。(もちろん、過去、多くの棋士たちが伝統文化の担い手として、ファン目線に立ってさまざまな努力を重ねてきたことも無視できない。もし、棋士たちが単に「将棋の強さ」だけを追求してきていたら、AIに負けたことで存在意義を失っていたかもしれない。)
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