サブスクは音楽を生かすのか、殺すのか――電気グルーヴ配信停止も波紋:AWA社長に直撃(3/3 ページ)
日本でなかなか浸透しきれない音楽の定額配信。「電気グルーヴ」の曲が配信停止になるなどちょっとした騒動も。運営会社の1つ、AWA社長に理由を直撃した。
楽曲との「新しい出会い」どう創るか
――話が変わりますが、膨大な楽曲を安く聴けるのがサブスクの強みです。ただ、一般的に視聴者の目にとまるのは、アプリ内でのランキング上位など「人気者」のアーティストになりがちという指摘もあります。かつて、CD店でマイナーなバンドの「掘り出し物」の曲を、店頭で聴いて見つけ出したような、音楽との幅広い出会いをサブスクではどう担保できるのでしょうか。インディーズのアーティストを始めとする音楽文化の維持にも影響すると感じます。
小野: CDよりもサブスクの方が「新しい楽曲に耳を傾ける」というシーンには向いていると思います。お金も(CDを買うより)掛からず、聴いても損はないので、「耳のハードル」は低くなっているはずです。ただ、インディーズのアーティストの間で、サブスク時代になってヒット作がバンバン出ているとはまだ言えないと思いますね。
(サブスクのアプリ上で)人気アーティストが永遠に聞かれ続けること自体が駄目ではありませんが、毎月(定額料金を)払ってもらうためには、「新たな出会い」が必要です。Mr.Childrenだけを聴くのではなく、新しい曲との出会いを僕らが提供したい。そのため、「他のユーザーが(プレイリストを)勧める」という切り口を重視しています。
――ただ、放っておくとどうしても、ユーザーはランキング上位の曲をよく聞く気もします。
小野: 確かにそれはありますが、うちのトップページは「DISCOVERY」(ユーザーが好みそうな他のユーザーのプレイリストを表示するページ)です。一概に、ユーザーみんながチャートだけを気にしているわけではない。僕らのサービスのミソは、プレイリストを公開している人が、「俺はロックに詳しいので」という主張もレコメンドでできる点です。他のサービスは、そこまでそこに主軸を置いていないと思いますね。
――また、映像業界では、NetflixやAmazonなど配信サービス側が既に巨額を投じてコンテンツ制作にも力を入れています。音楽サブスクの企業として同じような考え方はありますか。
小野: もちろん、株主のエイベックス・デジタルやサイバーエージェントと組んでいく話ですが、例えばAbemaTVから「恋ステバンド」というグループがデビューしました。高校生たちがバンドを組んだのですが、AWA独占で配信しました。コンテンツ制作の取り組みにも注力していきたいですね。
関連記事
- 発売中止の作品まで…… アニメの“円盤”は消滅するのか?
アニメのBlu-rayやDVDの売り上げが減少している。動画配信サービスの普及が要因。ただ配信終了した作品は見れなくなるため揺り戻しの可能性も。 - 目指せ蛍の光 “つい帰宅したくなる”新曲、USENが制作
USENがオフィス向けの「帰宅したくなる」効果を狙った曲を制作。職場の人間の帰宅に至る心理を分析、3部構成で自然と帰りたくなるよう促す。 - テレビはなぜ“つまらなくなった”のか 日テレ『世界まる見え!テレビ特捜部』生みの親に直撃
テレビはなぜつまらなくなったと言われるのか。『世界まる見え!』『笑ってコラえて!』などのヒットメーカーに直撃した。実験しなくなったテレビ業界の実情が浮き彫りに。 - 「退職予定者をいじめる」会社には重いツケが回ってくる、意外な理由
退職を表明した途端、上司などがつらく当たる問題。実はひどい対応を取った会社側に深刻なデメリットが発生するケースも。誰も不幸にならない「退職の作法」とは? - ディズニー、Hulu…… 動画配信の覇権争いは日本アニメをどう変えるか
覇権争いを激化させる映像配信プラットフォームの巨人たち。日本アニメにどんな影響を与えるか。アニメ・映像ビジネス報道の第一人者が斬る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.