「テレビ局が株主だから大丈夫」宮迫・亮の謝罪会見に見る、吉本興業の深刻な勘違い:専門家のイロメガネ(3/6 ページ)
宮迫・亮の謝罪会見で注目されたのが、「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫」といわれた、という発言だ。これは吉本が「テレビ業界の子会社」のような位置づけに近いことを意味する。事務所を辞めるべきは芸人なのか、それとも事務所幹部なのか? そして甘い対応をすれば、テレビ局にも責任が発生する可能性もあるのではないか?
闇営業が反社組織・ヤクザとの取引につながった
「詐欺集団のパーティーに出席したことは問題だが、会社を通さない闇営業はなんら問題がない、事務所とタレント間の契約の話に過ぎない」
こんな趣旨の発言は、芸能人の発言から各種メディア、SNSまで多数目にしたが、これはあまりに認識不足だ。
筆者は一貫してこのように指摘しているが、この考えは筆者の個人的な思い付きではない。同じく闇営業で謹慎となったザブングルが所属するワタナベエンターテイメント(ナベプロ)は、過去に行ったコンプライアンス研修について以下のように説明している。
「当該コンプライアンス資料では、会社を通さずに、個人的にパーティーの司会などの仕事を請け負うと、知らないうちに反社会的勢力に接触してしまう可能性があること等も明記し注意喚起しておりました。
(弊社のコンプライアンスに関する取組み および弊社所属ザブングルに対する対応について ワタナベエンターテイメイント リリースより 2019年7月1日)」
ナベプロのような大手事務所がコンプライアンス研修の資料に、元から闇営業は反社に通じると明記していたわけだ。結果的に問題を防げなかったとはいえ、ナベプロの認識は極めて正しい。一方で闇営業と反社との付き合いは別問題と発言していたタレントが多数いたことから、ナベプロの認識は芸能界で常識になっていないようだ。
プロ野球は球界全体の取り組みで、ドーピング、税金、薬物、暴力団などに関するトラブル防止の勉強会を行っている。球界ほど足並みがそろっていない芸能界で一斉に勉強会を行うことは現実的ではないが、少なくとも統一した基準でコンプライアンス研修が行われるべきではないのか。もっといえば芸能界で統一基準のコンプライアンス研修が行われていないことは、業界としてあまりに未熟といわざるを得ない。
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