明治や江崎グリコも手を出したハンバーガービジネス ロッテリアだけが飛躍した理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
明治や江崎グリコといった名だたる菓子・乳業メーカーがこぞってハンバーガービジネスに参入していた。しかし、現在も大きく繁栄しているのはロッテリアだけだ。どこで差がついたのだろうか。
かつて、日本のハンバーガービジネスの黎明期から発展期にかけて、明治乳業(現・明治)、森永製菓、ロッテ、江崎グリコ、雪印乳業(現・雪印メグミルク)といった名だたる日本の菓子・乳業メーカーがハンバーガーショップをこぞって展開していた。そうした中で、唯一ハンバーガーチェーンとして成功したのが、ロッテを母体とするロッテリア(東京都新宿区)である。
現在も国内404店舗(2019年6月末現在)の他、アジア各国にも進出しており、韓国やベトナムなどで大きく成功している。なお、海外展開は韓国のロッテリアによって行われている。
一方、明治が展開していた「サンテオレ」は関東を中心に7店ほどを残すのみ。森永の「森永ラブ」、グリコの「グリコア」、雪印乳業の「スノーピア」のブランドは、残念ながら消滅してしまった。
なぜ、ロッテリアだけが今もマクドナルド、モスバーガーに次ぐ、国内3位の勢力を誇っているのか。背景には、「エビバーガー」や「絶品チーズバーガー」といった、他のチェーンでは味わえないユニークなヒット商品を生み出す商品開発力があった。
創業時のマクドナルドと差別化
ロッテリアは1972年に創業。東京の日本橋高島屋に1号店を出店した。ロッテのアイスクリームを販売するアンテナショップという位置付けで、「ロッテのカフェテリア=ロッテリア」としてスタートした。メインの食事としてハンバーガーを楽しむことができる店舗で、学生・社会人(単身者や若年層など)ばかりではなく、ファミリー層をも取り込むバラエティ豊かな商品を展開した。
当時のラインアップは、レタス入りをアピールした「ロッテリアハンバーガー」(150円)、「チーズハンバーガー」(180円)、「フライドチキン」(ドラムスティック1本200円)、「アイスクリーム(6種)」(各150円)、「アメリカンコーヒー」(100円)などとなっていた。
ちなみに、71年に日本上陸を果たした当時のマクドナルドでは、ハンバーガーは80円で売られていた。72年に東京都板橋区で創業したモスバーガーは120円だった。ロッテリアが結構強気な価格設定だったことがうかがえる。ロッテリアは、食事にも間食にも対応できて、喫茶にも使えるファミリーレストランというのがコンセプトだった。マクドナルドは銀座三越を日本1号店に選んでおり、テークアウト専門だった。ストリートフードではなく、テークアウトもできるハンバーガー&アイスクリームレストランということで、差別化を図った。
エビバーガーのヒット
しかし、異業種であるハンバーガーショップの運営はなかなか難しく、しばらくヒットに恵まれなかったという。日本の食文化に合うようなハンバーガーを開発しようと試行錯誤を重ね、創業から5年後の77年に「エビバーガー」(当時の名称は「エビハンバーガーサンドイッチ」)を発売。これが、日本人にとっての縁起物であるエビを使った画期的な商品ということで爆発的なヒットとなり、ハンバーガーショップとしての地位を確立した。エビバーガーはプリプリのブラックタイガーを使っており、揚げたパテにタルタルソースをかける仕様だった。これは、洋食レストランのエビフライをハンバーガーにアレンジしたような印象をお客に与え、発売以降30年間ナンバーワン商品として君臨した。エビバーガーの効果もあり、77年には100店舗を達成している。
しかし、ライバルも黙ってはいない。2005年にマクドナルドが女優・モデルの蛯原友里さんをCMキャラクターに起用した「えびフィレオ」をヒットさせた。発売10周年となる15年にも蛯原さんがCMに再登場している。これにはさすがのロッテリアも影響を受けたようで、10年に行われたエビバーガーの大規模リニューアルの際には、歌舞伎界のプリンスである市川海老蔵さんをCMキャラクターに起用して対抗。発売4日間で来店したお客の9割が購入したほどのブームを引き起こした。
現在も、幾度となくリニューアルを繰り返しながら、エビバーガーはロッテリアを代表するメニューであり続けている。
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