明治や江崎グリコも手を出したハンバーガービジネス ロッテリアだけが飛躍した理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
明治や江崎グリコといった名だたる菓子・乳業メーカーがこぞってハンバーガービジネスに参入していた。しかし、現在も大きく繁栄しているのはロッテリアだけだ。どこで差がついたのだろうか。
ロッテリアが繁栄した理由
これまで紹介したケースを振り返ってみよう。ロッテリアの後を追って、サンテオレ、森永ラブ、グリコア、スノーピアがハンバーガーやアイスクリームを売るファストフードショップを展開しようとして、いい線まで行った。しかし、最終的にはエビバーガーや絶品チーズバーガーほどのヒット商品に恵まれず、縮小・撤退していったことがうかがえる。
87年、マクドナルドがハンバーガーにフライドポテトとドリンクを組み合わせて安くした「サンキューセット」を発売すると、ロッテリアは「サンパチトリオ」を発売するといったように、商戦を盛り上げた。このようにして世間に話題を振りまいたのも、菓子・乳業系ハンバーガーショップではロッテリアだけだったのではないだろうか。
2000年前後の価格破壊によるマクドナルドの値下げ攻勢は、ハンバーガー業界に大きなインパクトを与えた。ロッテリアを除く菓子・乳業系チェーンは、マクドナルドに100円バーガーを売られ、値段に大差がついてしまったことで、集客ができなくなってしまった。そのマクドナルドも商品の品質悪化から、顧客の信用を失い、日本法人を立ち上げた藤田田氏が退場していくのも皮肉な結果であった。
もちろん、ロッテリアも多大な影響を受けた。低価格路線についていって疲弊したうえ、04年に日本マクドナルドから原田泳幸・新社長(当時)の指揮下、エビバーガー戦争を仕掛けられ、追い込まれた。05年11月には企業再生会社リヴァンプの資本提携を受け、リヴァンプの玉塚元一・共同代表(元ユニクロのファーストリテイリング社長、のちのローソン社長。現在はデジタルハーツホールディングス社長)がCEOとして経営をしていた時期もある。しかし、絶品チーズバーガーのヒットやエビバーガーの再興といった商品の改革で持ち直し、10年にはリヴァンプが経営から手を引いている。
ロッテリアが、マクドナルドやモスバーガーと並ぶハンバーガー業界の第3極として、存在感をこれからも示し続けられるか。菓子メーカーとしての強みを生かしたスイーツの開発や、定評のあるコーヒーを生かしたハンバーガーカフェとしての可能性を鑑みれば、1980年代から店舗数は伸びていないものの、成長の余地を有したチェーンといえるだろう。
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