誰がミルク業界を潰したのか? 米国で激化する「ミルク戦争」の行方:瀕死の状態(3/4 ページ)
米国で、牛乳離れが加速している。子どもの成長に欠かせない、栄養価の高い飲み物として知られているのに、なぜ米国人は牛乳をあまり飲まなくなったのか。背景に……。
近年、人気急上昇中のオートミルク
さらに驚くのは、近年人気急上昇中のオートミルクの価格だ。オートミルクとはオーツ麦から作られるミルクのこと。牛乳の販売価格の約2.5倍なのに、他の植物性ミルクより食物繊維が多く含まれていることや、自然な甘さが受けて、急激に愛用者が増えている。米国での売り上げは、過去2年間で284%増と大きく伸びている。
その急成長ぶりを象徴するのが、スウェーデン発オートミルクのブランド「Oatly」だ。パッケージがポップで特徴的な「Oatly」の商品ラインアップの中でも、バリスタ・エディションは人気になりすぎて、米国では完売状態が続いている。
オフィシャルサイトでは、32オンス入りの6本セットが25ドルで販売されているのだが、その人気ぶりにあやかって過去にはAmazonで正規価格の4倍で売るツワモノもいたようだ。
さらに、オートミルクの人気を牽引するのは、コーヒーショップだ。牛乳で作るカフェラテの泡のような、滑らかさと甘さがあるので、オートミルクを取り扱う店が増えている。また、ナッツアレルギーがあって、アーモンドミルクを飲めない顧客の代用品としても支持されている。
このように、健康志向の高い人やさまざまな味のバリエーションを楽しみたい人に、じわじわと浸透している植物性ミルク。だが酪農業界もただ黙って見ているわけではない。酪農の業界団体は、植物性ミルクの「ミルク」という表示が消費者を混乱させるとして、FDA(米国食品医薬品局)に規制するように訴えた。乳製品の表示をめぐる、酪農業界と植物性ミルク業界の全面対決が勃発したところだ。
そこで、FDAは酪農業界が訴えているような根拠を探るべく、一般からの意見を聞き取る60日間の公示期間を設けた。19年1月末までの締め切りに提出されたのは1万1903件の意見で、その中から無作為に検出された7061件が審査された。
その分析によると、76%の人が植物性の代替え品に、乳製品と同様の表示(ミルク、チーズ、バターなど)を使用することは、問題がないと回答している。つまり、大多数の人がアーモンドミルクと牛乳の違いは理解できるし、栄養素や成分の違いなども表示によって誤解を招いたりしないと考えている。
酪農業界が感じているように、植物性ミルクが誤解を招くような表示で不当にマーケットシェアを奪っているとは考えにくいということになる。それでも、FDAは単純に意見書だけを参考に結論づけず、決定はまだ先になりそうだ。
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