誰がミルク業界を潰したのか? 米国で激化する「ミルク戦争」の行方:瀕死の状態(4/4 ページ)
米国で、牛乳離れが加速している。子どもの成長に欠かせない、栄養価の高い飲み物として知られているのに、なぜ米国人は牛乳をあまり飲まなくなったのか。背景に……。
日本にも波及するかも
植物性ミルクの人気に対抗するために、酪農業界は牛乳の新しい商品開発も行なっている。健康志向の高い消費者向けに開発された新商品が、「Fairlife」だ。特殊なろ過方法で乳糖を排除し、通常の牛乳よりもプロテインが多く糖分が少ない商品になっている。
また、子どもに人気のチョコレートミルク「TruMoo」を大人向けに開発した「TruMoo After Dark」というブランドも登場した。子ども用に購入したチョコレートミルクを大人も飲んでいることに着目し、「TruMoo After Dark」ではさらに大人の味覚に合うように、バニラ&チャイスパイス、ダークチョコレート塩キャラメルなどのフレーバーを展開している。
消費量が低迷している牛乳の中でも、フレーバーミルクは人気急上昇中のカテゴリーで、新たな顧客を開拓することでさらなるビジネス成長を狙っている。
大手ブランドが手がける新商品の開発だけではなく、失った牛乳の消費量を取り戻そうというローカル単位の動きも活性化している。
ミルク市場全体の8%を占める「学校での牛乳」の消費量を増やすべく、酪農業界は高校などにスムージーやホットチョコレート、アイスラテを提供するように働きかけている。草の根的な活動の一環として、例えばノースダコタ州のある高校では、地元の酪農家グループがエスプレッソマシンなどの購入費用として、5000ドルの助成金を出している。
また、フロリダ州でも21の高校で、酪農家のグループが簡易のコーヒーショップを出せるようにとカートを購入している。また南西部の州では、7つの高校でカフェラテを提供するプログラムに助成金を出しているという。
これらのプロジェクトが、どれだけ牛乳の消費量をアップさせられるかは未知数だが、もしかしたら草の根的な活動がミルク業界を救う救世主となるかもしれない。
米国で勃発している「ミルク戦争」。その戦いは、そのうち、日本にも波及するかもしれない。日本での、今後のミルク業界の動きも要チェックだ。
著者プロフィール:藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。
『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
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