ハロが誤作動したら? スペースコロニーの行政とは?――ガンダム世界の“社会問題”を分析:元日銀マン・鈴木卓実の「ガンダム経済学」(4/4 ページ)
スペースコロニーなどガンダム世界のSFが現実味を帯びてきた。例えばハロが誤動作したら誰が責任を取る? 社会科学の見地からリアルに分析。
ガンダムという「物語」で経済学を楽しもう
さて、節目となる第10回を終えるに当たり、ガンダムのような物語と、経済学の関係を簡単に述べてみたい。従来、「物語」を解釈するために、経済学が用いられることもあれば、経済を分かりやすく論じるために、「物語」が使われた事例も多い。連載を始める際、筆者の頭をよぎったのは、スティーブン・J. ブラムス『旧約聖書のゲーム理論 ― ゲーム・プレーヤーとしての神』(東洋経済新報社)である。敬虔なクリスチャンである著者が、「天地創造」や「十戒」などをゲーム理論で読み解く痛快な経済書だ。
この他にも、意思決定者が1人の経済を「ロビンソン・クルーソー」モデルと表現したり、ジョン・フォン・ノイマンとともにゲーム理論の基礎を築いたオスカー・モルゲンシュテルンの初期の論文では、シャーロック・ホームズとモリアーティ教授を例示に用いている。「オズの魔法使い」は銀貨と金貨を巡る、つまりは経済学的な寓話である、という学術論文もある。
物語と経済学の親和性は高い。物語に登場する印象的な状況や登場人物の際立った行動・意思決定、逆に神話や昔話で繰り返し語られる普遍的なストーリーのモデルは、社会や人間行動の法則性をあぶりだそうとする経済学のパターンと似ているからかもしれない。今後も、日本発の物語であるガンダムを通じて経済学を楽しんで頂ければ、これほど筆者冥利に尽きるものはない。
著者プロフィール
鈴木卓実(すずき・たくみ)
たくみ総合研究所・代表。エコノミスト、睡眠健康指導士。ガンダムと同じ年齢(1979年生まれ)。新潟生まれ仙台育ち。仙台育英学園高等学校出身。地元での仮面浪人を経て、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。2003年、日本銀行に入行後は、産業調査や金融機関モニタリング、統計作成等に従事。2018年より現職。経済家庭教師や各種セミナー(個人向け、企業向け)、経済・金融や健康リテラシー向上のための執筆、アドバイザーなどを通じて情報発信を行う。楽天証券トウシルにて「数字でわかる。経済ことはじめ」、東洋経済オンラインにて「あの統計の裏側」を連載。ビデオニュース・ドットコム「マル激トーク・オン・ディマンド」(第929回)へ出演。
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