かんぽ不正を「過剰なノルマ」で、片付けてはいけない理由:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
詐欺的販売手法が明るみに出たことを受け、日本郵便はかんぽ生保の営業目標やノルマを廃止するという。このようなニュースを聞くと、日本郵便が「利益市場主義」に陥っていた印象を受けるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
詐欺的販売手法が次から次へと明るみに出たことを受けて、日本郵便が、かんぽ生命保険の営業目標や販売員のノルマを廃止するという。
なんてニュースだけを聞くと、何やら日本郵便が「ノルマ至上主義」に陥ってしまったことが悪いような印象を受ける人も多いのではないだろうか。実際、既に「公共サービスだった郵便局を無理に民営化してしまったひずみだ」みたいなことを声高に叫ぶジャーナリストや専門家もあらわれている。
ただ、個人的には、こういう流れは結果として、問題の本質から目をそらす、「ミスリード」になってしまうのではないかと危惧している。
国営化時代の郵便局ではあり得ないタイプの不正行為が、民営化した途端にいきなり登場したというのなら、「郵政民営化のひずみ」と結論付けるの分かるが、実はこの不正はそうではない。
今回のような「営業成績」を動機とした、簡易保険販売にまつわる不正行為は、郵便局の中では郵政民営化以前の90年代から確認されている。保険金詐欺目的の場合はもっと古い。ノルマうんぬん、民営化うんぬんと関係なく、郵便局の保険業務というのは、もともと「不正の温床」だったのだ。
例えば、1970年、山梨の郵便局の保険外交員5名が、「病弱者を探し出して、本人の承諾なしに被保険者とし、自分で簡易生命の保険契約を申し込んだ」(読売新聞 1970年10月12日)という不正が発覚した。彼らは病弱者を「健常者」としての虚偽の事実を書き込んで、被保険者が亡くなってからおりた保険金を懐に入れてた。
81年には、大分の郵便局でやはり「保険係員3人が、町内のお年寄りら11人を、本人に無断で簡易保険の契約者に仕立て上げ、保険金をだまし取っていた」ことが判明する。
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