かんぽ不正を「過剰なノルマ」で、片付けてはいけない理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
詐欺的販売手法が明るみに出たことを受け、日本郵便はかんぽ生保の営業目標やノルマを廃止するという。このようなニュースを聞くと、日本郵便が「利益市場主義」に陥っていた印象を受けるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
問題の根っこに「役所体質」
神戸製鋼の不正がバレたのは一昨年前だが、あの不正も昨日今日始まったものではない。同社も利益を上げるようにプレッシャーをかけられた現場の技術者が、40年以上前から連綿と続けてきた不正が、ようやく陽の目を浴びた。
かんぽの不正もこれと同じ構図で、郵便局内での極めてトラディショナルな不正が、現場職員の疲弊によって覆い隠せなくなってきただけなのである。
さて、このように「かんぽ不正」の実態が見えてくると、この問題の根っこにあるのが「ノルマ」「民営化」ではなく、まったく別のものだということが分かっていただけるだろう。
では、それは何かというと、「役所体質」である。
最近の厚労省や財務省を見れば分かるように、苦しい立場に追いやられた公務員は「組織を守る」という大義名分の下、「改ざん」や「不正」に手を染めやすい。この伝統は残念ながら、全国の郵便局にも受け継がれてしまった。なぜかというと、民営化が中途半端だったからだ。多くの識者が指摘するように、日本郵便は民主党政権のときに「再国有化」されてしまった。ここで民間の経営者がイニシアティブをとるはずが、民間の経営者をお飾りにして、裏で役人が権限を振るう「会社風の役所」になってしまった。これこそが、「かんぽ不正」を引き起こした最大の原因である。
それこそお前の妄想に基づく「ミスリード」だというお叱りが飛んできそうだが、もともと不正体質のある国営企業が、見え方だけ「民営化」してもうまくいかないのは、実は日本人が知らないだけで世界の「常識」となっている。
それをもっとも分かりやすく体現しているのが「ソ連崩壊」だ。
ご存じのように、日本の役人がいまだに引きずる「計画経済」の生みの親・ソ連は、体制崩壊するまですさまじい「不正のデパート」となった。政府の経済統計は改ざんのオンパレード、国益企業の経営者も競い合うように利益をかさ上げ、するなど令和日本でもよく見かける「不正」があちこちで行われた。
関連記事
- ちょっと前までチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が、減速した理由
ブームの牽引役などとチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が叩かれている。2018年12月決算は、8年ぶりに赤字。低迷の原因として、米国での閉店や類似店舗の増加などが指摘されているが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 吉本興業の謝罪会見が、壮絶にスベった理由
吉本興業が謝罪会見で、壮絶にスベってしまった。と言っても、説明の中に気のきいたギャグがなかったとかそういう類の話をしているわけではない。筆者の窪田氏が言いたいことは……。 - 売上5倍! 経営難に陥っていたキャンプ場を、どうやって再生させたのか
キャンプ場が盛り上がっている。現在は「第二次ブーム」でたくさんのお客が詰めかけているが、その一方で経営が苦しいところも少なくない。そんな中で、赤字に陥っていたキャンプ場を再生した会社がある。どうやって再生させたのか、会社の専務取締役に話を聞いたところ……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.