かんぽ不正を「過剰なノルマ」で、片付けてはいけない理由:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
詐欺的販売手法が明るみに出たことを受け、日本郵便はかんぽ生保の営業目標やノルマを廃止するという。このようなニュースを聞くと、日本郵便が「利益市場主義」に陥っていた印象を受けるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
一体誰が得をするのか
では、翻って我らが日本郵便はどうかというと、いまだに副社長は総務官僚である。しかも、長門正貢社長をはじめ、経営陣にはメガバンクなど金融機関出身者がズラリと並んでいる。だったら、民間じゃないかと思うかもしれないが、日本の銀行は「護送船団方式」を始め、日本の中で最も旧ソ連的な計画経済の洗礼を受けた業界である。
要するに、ロシア郵便とだいぶ事情が異なり、経営トップたちがいまだにゴリゴリの「役所体質」を引きずっているのだ。
ここにメスを入れなくてはいけないことは明らだ。ということは、現経営陣の退任はもちろん、これからどうやって霞ヶ関と縁を切っていくかを考えなくてはいけないわけだが、その機運が盛り上がる前に、日本郵便側が「ノルマ廃止」なんて先手を打ってきた。
「ノルマ主義が悪い」「そもそも郵政民営化の歪みだ」――。騒ぎたい人たちにとっては、そういうシンプルな話のほうがありがたいのかもしれないが、そうなることで一体誰が得をするのか考えるべきだ。(窪田順生)
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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