れいわ新選組も掲げる異端の経済理論「MMT」って何? その“強烈な弊害”まで徹底解説:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
れいわ新選組も掲げる経済理論「MMT」。話題だが意外とまだ知らない人も少なくないのでは?人ごとでないその新規性と弊害を徹底解説。
消費税の撤廃などを訴えた「れいわ新選組」が参院選で約230万票を獲得したことから、同党が経済政策として掲げるMMT(現代貨幣理論)が大きな注目を集めている。MMTが異端の経済学とされているせいか、推進する人も反対する人も異様なまでに感情的であり、本当のところどのような理論なのか客観的に紹介されるケースは少ない。以下では可能な限り、分かりやすくMMTについて解説してみたい。
限界指摘されてきた既存の財政施策
MMTは、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授らが提唱している経済理論で、主流派の経済学とはかなり趣が異なっている。ごく簡単に説明すると、自国通貨建てであればインフレが発生するまで財政出動が可能という理屈である。
まず経済理論にあまり詳しくない人のために、経済政策のイロハについて説明しておこう。
経済政策に関する議論では、いろいろと小難しい理屈がやりとりされており、こうした難解に聞こえる話で煙に巻こうとする識者もいるのだが、景気を良くするための方策は基本的に3つしかない。
1つ目は政府が公共事業などを行って景気を刺激する「財政政策」、2つ目は金利を引き下げることで銀行の貸し出し増加を狙う「金融政策」、そして、3つ目は、経済の仕組みを変え、自発的にマネーが回り出すよう促す「規制緩和(構造改革)」である。どんなに複雑に見える経済政策であっても、基本的はこれら3つの組み合わせになっているので、ぜひ覚えておいてほしい。
戦後の経済政策の中心となってきたのはケインズ経済学をベースにした財政出動である。具体的には国債を発行して政府が資金を調達し、財政出動で景気を刺激するというものである。ところが、1990年代に入って財政出動の効果が低下し、財政政策の限界が指摘されるようになってきた。
特に小渕政権時代には、大型の財政出動をやり過ぎた結果、日本政府が抱える負債が急激に増大した。主流派経済学では、過度な政府債務は金利の上昇を招き、民間の設備投資を抑制するなどの弊害があるため、リスク要因と認識されている。
こうした状況から小泉政権は財政出動に頼るのをやめ、産業構造そのものを改革することで経済を活性化しようとした。これがいわゆる構造改革だが、この実施には多くの痛みが伴うため、国民が猛反発。結局、小泉改革は途中で頓挫してしまった。
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