れいわ新選組も掲げる異端の経済理論「MMT」って何? その“強烈な弊害”まで徹底解説:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
れいわ新選組も掲げる経済理論「MMT」。話題だが意外とまだ知らない人も少なくないのでは?人ごとでないその新規性と弊害を徹底解説。
れいわ新選組支持の低所得者に打撃
確かにインフレ率が一定水準を超えた場合、財政出動を停止したり、金利を引き上げたりすれば、インフレをコントロールすることは可能だろう。だが、現実には、インフレが始まってから、これを抑制するのは簡単なことではない。
れいわ新選組は公務員の大増員、最低賃金1500円、奨学金の政府による肩代わり、農家の所得補償、公共事業の大幅な拡大といった巨額の財政支出を、消費税を廃止した上で実施するとしており、れいわ政権下では多くの国民が政府支出に頼って生活することになる。ここでインフレ率が2%に達した場合、これらの支出が一気に削減されることになり、低所得者の生活を直撃する可能性がある。
れいわの主な支持者は低所得者層になると考えられるので、インフレを止めるためには、れいわの主な支持層を敵に回す必要が出てくる。ベネズエラやアルゼンチンなど、インフレを止められない国は多いが、その理由のほとんどは、財政出をやめてしまうと、政権の支持者を失ってしまうからである。
MMTを実施すれば、経済は成長する可能性が高いので、それなりの効果が期待できるのは間違いない。だがその後の制御は極めて難しく、インフレが止められなくなる可能性は高いだろう。インフレが進むと、賃上げよりも先に物価が上がるので、庶民の生活は限りなく苦しくなる(インフレが発生した時の庶民の苦しさはデフレの比ではない)。このあたりの可能性についてどう考えるのかが、MMTについて議論する上でのポイントとなりそうだ。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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