なぜ日本企業は「セコい不正」をやらかすのか:スピン経済の歩き方(4/4 ページ)
日本企業のセコい不正が後を絶たない。品質検査データをイジったり、燃費データを補正したり、最近はそのセコい手口が消費者まで拡大されている。その背景に何があるのか。スゴ腕弁護士が分析したところ……。
唯一の救いは「第三者委員会」
では、社外取締役制度が機能しないのなら、もはや日本企業の”サラリーマン犯罪”を防ぐ術はないのか。このシビアな現実を前にして、河合氏が「唯一の救い」と捉えているのは、第三者委員会だ。
「私がこれまで被害者の弁護を請け負ってきたケースなどでも、後ろめたいことがある企業は絶対に第三者委員会はつくりません。裏を返せば、何か問題が起きたら第三者委員会をつくるのが当たり前のような世の中になれば、企業の不祥事をだいぶ抑えることができるのです」
確かに、支離滅裂な言い訳を繰り返して、次から次へと問題が浮かび上がった吉本興業が、経営に対してなんの効力もない「経営アドバイザリー委員会」を立ち上げてお茶を濁したことからも分かるように、「問題企業」ほど、どうにかして第三者委員会を設置しない道を模索する事実がある。
「と言っても、第三者委員会ならなんでもいいというわけではなく、世間の批判をかわすためにとりあえず知り合いの弁護士に頼みましたという“なんちゃって第三委員会”ではありません。有名な“ヤメ検弁護士”なんかがやっている第三者委員会も危ない。久保利英明(第三者委員会会報告書格付け委員会を設立した弁護士)や中村直人(スルガ銀行の第三者委員会委員長を務めた弁護士)という金や権力に屈しない気骨のある弁護士が中に入って、徹底的に内部を調べ上げるようなものが望ましいです。少なくとも日弁連の推薦を受けたような人ではないといけませんね」
日本企業の「セコい不正」がいつまで経ってもなくならないのは、本物の「第三者委員会」が普及していないからなのかもしれない。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
関連記事
- なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「賃金上げたら日本は滅びるおじさん」の言っていることは、本当か
「最低賃金の引き上げ」問題をめぐって、議論がヒートアップしている。「日本の低賃金にメスを入れるべき」という声がある一方で、「世紀の愚策」などと猛烈に難癖をつけている人たちも。この問題、どちらに説得力があるのかというと……。 - ちょっと前までチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が、減速した理由
ブームの牽引役などとチヤホヤされていた「いきなり!ステーキ」が叩かれている。2018年12月決算は、8年ぶりに赤字。低迷の原因として、米国での閉店や類似店舗の増加などが指摘されているが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。 - 人手不足は本当に「悪」なのか 騙され続ける日本人
人手不足が原因で倒産する企業が増えているようだ。東京商工リサーチのデータをみると、前年度から28.6%も増えて、過去最高を更新している。数字をみると、「人手不足=悪」のように感じるが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.