「世界一真面目な労働者は日本人」と触れ回っては、いけない理由:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
またしても日本の「働き方」のクレイジーさを物語る残念なデータが出てきてしまった。日本を含むアジア太平洋地域14の国・地域を対象にした就労実態調査(パーソル総合研究所調べ)を見て、筆者の窪田氏はどのように感じたのかというと……。
仕事をすぐにほっぽり出す人たち
なんてことを言うと、「ゆがんでいるのは貴様だ! 日本には世界に誇る終身雇用という労働文化があってよその国と比べられるようなものではない!」とか「日本の組織人は与えられた仕事をしっかりとこなす滅私奉公という気概があるんだ、世界一マジメな日本人労働者にイチャもんをつけるな!」なんて怒り狂う方も多いかもしれない。
ただ、ちょっと言わせていただくと、その大前提が間違っている。「石の上にも3年」という感じで、嫌な仕事も投げ出さず、一生涯同じ会社で同じ仕事をする日本人のセルフイメージは戦後にマスコミなどが触れ回ったもので、もともと日本では「腰掛け仕事」が常識だったのである。
関西大学名誉教授の竹内洋氏は、日本式経営の特徴と言われる終身雇用や年功序列が、実はそんなたいそうな話ではなく、比較的新しいトレンドだということを以下のような指摘している。
『戦前の企業においては、サラリーマンの解雇は日常茶飯事だった。会社がサラリーマンを容易に解雇しただけではない。サラリーマンも好景気のときにはこれまで勤めてきた会社を簡単に見捨てて転職している。だから1920年のある雑誌(『実業之日本』)にはこんなことさえ書かれている。
「日本では多くの場合腰掛的に執務して居るが、外国では、例えば巡査を三十年勤めて居つたとか、教員を何十年勤めて居つたとか云つたやうに、一ツの仕事を永年勤続して居たのを名誉とする風があつて、日本人の如く移り気が少ない」』(日本経済新聞 2009年4月13日)
「昔の日本人は今の若者などと比べ物にならないほど根性があった」とか何かとつけて昔を美化するおじさんたちは衝撃かもしれないが、かつては「時間にルーズ」「約束を守らない」「仕事をすぐに辞める」のが伝統的な日本人気質とされていたのだ。
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