がっかりだった自動運転バスが新たに示した“3つの答え”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
小田急電鉄などが手掛ける自動運転バスの2回目の実証実験が行われた。1年前の前回はがっかりしたが、今回は課題に対する現実的な解決策を提示してくれた。大きなポイントは3つ。「道路設備との連携」「遠隔操作」「車掌乗務」だ。
自律走行も進化していた
自動運転バスも進化している。前述した信号機との連動だけではなく、今回は路上駐車車両の回避も自動制御可能になった。また、前回は起点と終点だけの運行だったけれども、今回は運行距離を延長して、途中に停留所を設けた。GPSによる停留所認知、道路脇に寄せる停車を行った。ドア開閉は車掌および遠隔操作。発進は運転手または遠隔操作だ。
以上の要素を、実際の運行に沿って説明する。
出発地点は県立湘南海岸海浜公園中部バス駐車場だ。ここで事前予約の確認が行われる。スマートフォンにスタンプツールを当てると画面に検札マークが表示される仕組みだ。これで予約者の本人確認が行われる。このスタンプ操作が本当に必要かどうかは検証が必要だろう。乗車前に係員が確認するとなれば、通常のバスより手間が増えてしまう。車掌が本人確認するとしても、予約済み画面を目視すればよく、スタンプの意味が不明だ。
駐車場出口から自動運転が始まる。片側2車線のうち左側を走行。最高速度は時速40キロで、他の車の流れより遅い。何台かに追い越される。前方に割り込まれることはなかったけれども、信号では前の車に続いてゆっくりと停車した。この区間は信号と協調運転しており、前方の信号に合わせて速度を調節している。また、片瀬海岸二丁目交差点の横断歩道は歩行者押しボタン式で、ボタンを押した時点で信号の変化をバスに送信する。バスは一般車より先に信号の変化を予知できる。
続いて、今回初めて設置された中間バス停「江ノ島水族館前」に停車。ここは江ノ電バスの正規の停留所で、自動運転により正しい位置に停車。ここでベビーカーの乗車実験が行われた。バスの車体が小さいため、前方乗車口から載せたところ、他の乗客が着席した状態では通路を通れない。私たちは試乗1回目で、この教訓をもとに次からは降車口から載せた。実験の効果アリ。また、介助や乗降口変更などの対応として、車掌の役割は大きいと分かった。
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