50年前から分かっていた少子高齢化問題、なぜ回避できなかったのか:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「敬老の日」の昨日、この国の「敬老」の意味をあらためて考えさせられるニュースがあった。65歳以上の高齢者は約3588万人で、全人口に占める割合は28.4%と過去最高となり、これは同じく高齢化が進むイタリアの23%を大きく引き離し、世界一となっているというのだ。
50年以上前に、現在の「危機」を正確に予見
そもそも、1964年から定められた「敬老の日」は、1950年に兵庫県で制定された「としよりの日」にルーツがあるのだが、当時の高齢化率は4.9%。そのように老人がマイノリティだった時代に生まれた「敬老の精神」が、高齢化率28.4%の現代社会になってもまったく変わらないほうが無理がある。時代が変われば、人々の考え方も変わっていくのは自然の流れなのだ。
それは裏を返せば、変化を受け入れず、時代遅れの考え方を押し通すと言うのは自然に逆らう行為であって、どこかで必ず破綻をきたすということでもある。「どんなに時代が変わっても変わらないことがある」「オレたちが若い時はそれが普通だ」なんて若者に説教するおじさんたちのやることが往々にしてロクなことにならないのは、これが理由だ。
実はそのロクなことにならなかったことの最も分かりやすいケースが、少子高齢化問題だということはあまり知られていない。「限界集落だ」「人口フリーフォールだ」なんだと近年大騒ぎになっているので、この現象を最近になって分かったことだと思っている方もいらっしゃるかもしれないが、実は今のような有様になることは50年以上前から分かっていた。
例えば、1967年4月27日の「ふえる老人 減る子供 人口問題をどうする 厚相、審議会に意見きく」という読売新聞の記事では、以下のような厚生省人口問題研究所の推計が掲載されている。
「総人口は約500万人ずつ増加しているが、これも昭和八十年(一億二千百六十九万人)をピークとして減少に転じる。(中略)昭和九十年には幼少一七%、成人六三%となり、老齢人口が二〇%を占めるという」
昭和80年にあたる2005年の人口は1億2777万人で試算よりも増えているが、昭和90年にあたる2015年の15歳未満は12.5%、65歳以上は26%となり試算よりも深刻なことになっている。
我々は50年以上前に現在の「危機」をある程度正確に予見していたにもかかわらず、この50年でそれを回避することができず、しかも予想よりもひどい状況に陥っているのだ。もちろん、過去50年、少子高齢化に対して何もしてこなかったわけではない。政治家、霞ヶ関のエリート、頭脳明晰な専門家らが延々と議論を繰り返して、さまざまな取り組みを続けてきた。が、一方でその努力をすべてチャラにしてしまう誤った政策も50年間続けてきたということなのだ。
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