50年前から分かっていた少子高齢化問題、なぜ回避できなかったのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「敬老の日」の昨日、この国の「敬老」の意味をあらためて考えさせられるニュースがあった。65歳以上の高齢者は約3588万人で、全人口に占める割合は28.4%と過去最高となり、これは同じく高齢化が進むイタリアの23%を大きく引き離し、世界一となっているというのだ。
人が減ったらとにかく頭数を増やせばいい
では、それは何かというと、とにかく中小零細企業を保護して増やすことに注力するあまり、「賃金を上げる」ことを軽んじて、社会全体で後回しにしてきたことである。
なぜこうなってしまったのかというと、「人が減ったらとにかく頭数を増やせばいい」という戦争学をベースにした古い経済原理こそが正しいと信じて疑わぬ「思い込み」だ。
本来、人口減少に対しては生産性を上げる、つまり賃金を上げることが有効なことは言うまでもない。人口が減少して社会保障やインフラの負担が上がるので、それに伴って収入を増やしてやらないことには、労働者の生活はいつまでたってもラクにならない。ラクにならないので、結婚や子どもをもうけるハードルが上がる。
しかし、日本はご存じのように、「賃金を上げたら会社がバタバタ潰れておしまいだ!」とヒステリックに叫ぶおじさんが政財界で幅をきかせてきたので、他の先進国が順調に賃上げしていく中でも、時代の流れに逆らって、ビタッと低賃金を固定させてきた。
少子化にしてくださいと言わんばかりなところに、さらに拍車をかけたのが、1980年代から始まった大量の外国人労働者の受け入れだ。
これによって、日本人よりも低い賃金と低い待遇でコキ使えて、文句を言ったら容赦なく切り捨てる労働力が日本に大量に流れ込み、本来ならば潰れるか、より大きな規模の会社に統合されているはずの「低賃金に依存する中小企業」が大量に世に溢れかえったのである。
このように「人が減ったらとにかく頭数を増やせばいい」という考えに基づく施策が、ことごとく裏目に出て、むしろ人口減少のエンジンとなってきた、ということは安倍政権が外国人労働者と同様に力を入れる「女性活躍」を見てもわかる。
2018年12月に発表された、世界経済フォーラム(World Economic Forum)の「The Global Gender Gap Report 2018」によると、各国の男女格差を測ったジェンダー・ギャップ指数において、日本は144カ国中110位である。
このジェンダーギャップを埋める、つまりは賃金を上げないで、世の女性にもっと働きなさいと促したところで、男性よりも低賃金でこき使える安価な労働力を市場に増やしているに過ぎないので、賃上げを阻む圧力にしかならない。当の女性たちも、ワンオペ育児で疲弊しながら働いていてもなかなか賃金が上がらないので心身が壊れていく。自分一人でもギリギリなところ、出産育児まで手が回らないのだ。
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