カローラ・セダン/ワゴンが意味するもの:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
最量販車種の座をプリウスに奪われ、ファミリーカーの本流の座はノア/ボクシーに奪われた。気がつくとカローラは「年寄り向けの地味なクルマ」でしかなくなっていた。さらに世界各国で販売されるカローラは、地域によって求められるキャラクターが異なる。「スポーツ」「高級」「取り回し」の3つを同時にかなえるクルマを目指さなければいけない宿命を持ったカローラ。TNGAでハード的には対応を進めたが、問題は「自分のものにしたい」と思わせるキャラクターが立っているかどうかだ。
庶民の夢とポスト「いつかはクラウン」
そうした状況を踏まえてカローラは誕生する。だからカローラは最初からミニマルなクルマではなく、庶民の夢のクルマとして誕生したのである。デビュー時のライバル、日産サニーに対して「プラス100ccのゆとり」を掲げ、サニーの1000ccに対して1100ccユニットを搭載したあたりからも、そのコンセプトは伺える。価格は43万2000円。
少々言葉は悪いが、「中の上」こそがカローラだった。以来、日本人が豊かになるにつれて、モデルチェンジのたびに着実に高級方向にシフトしていったカローラは、バブル期に開発された7代目(100系)でその頂点を迎える。そこが「前モデルより高級」で進める行き止まりだった。
8代目以降、カローラはそれ以降のカローラの価値を形作る新たな道を開拓する以外なくなったのだが、トヨタの大看板車種であり、期待が大きい分、船頭も増える。開発責任者といえども、自分の好きなように作れるクルマではない。スター車種であるがゆえに、大胆な変更ができずカローラは茹(ゆ)でガエルになっていく。
最量販車種の座をプリウスに奪われ、ファミリーカーの本流の座はノア/ヴォクシーに奪われた。気がつくとカローラは「年寄り向けの地味なクルマ」でしかなくなっていた。
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