カローラ・セダン/ワゴンが意味するもの:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
最量販車種の座をプリウスに奪われ、ファミリーカーの本流の座はノア/ボクシーに奪われた。気がつくとカローラは「年寄り向けの地味なクルマ」でしかなくなっていた。さらに世界各国で販売されるカローラは、地域によって求められるキャラクターが異なる。「スポーツ」「高級」「取り回し」の3つを同時にかなえるクルマを目指さなければいけない宿命を持ったカローラ。TNGAでハード的には対応を進めたが、問題は「自分のものにしたい」と思わせるキャラクターが立っているかどうかだ。
反コモディティ
今は世界中のクルマが、ヒエラルキーなしでテーブルの上に置かれている状態だ。流行りのSUVを見ると、サイズや価格の違いがヒエラルキーになっていないことがよく分かる。その中から「選ばれるクルマ」であるために、カローラはカローラとしての確固たるキャラクターがなくてはいけない。
そういう目で見た時、世界の異なる市場にマルチに対応できることは作り手側には意味のあることかもしれないが、買う側にはあまり関係ない。アジアでは確かにカローラを「ありがたい高級車」と思うユーザーが多いのだろうが、日本の顧客でカローラを高級車だと思う人はいない。ではその高級車としての素養が何も役に立たないのかといえばそうではなく、いくらヒエラルキーがないといっても、ヴィッツではなくカローラを選び、エクストラコストを払う意味は支えてあげなくてはならない。
というある種カオスなマーケットに、カローラ・セダンとワゴンはデビューする。豊田社長は常日頃から「コモディティ化させない」と主張している。それは「機能すれば何でもいい」ではなく、「自分のものにしたい。身近に置きたい」と思わせることだ。
そういうものになっているかどうか。その判断は難しい。多分キーワードは「キャラ」だ。例えばSUVはその多くがキャラ商品だ。しかしながらセダンやワゴンはそのキャラを付けるのが難しい。その中でどうやって戦っていくのか、近々試乗会があるとのことなので、そこでカローラのキャラが見つかるかどうか、真剣に向き合ってみたいと思う。
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