「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いから」は本当か:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
少子化に歯止めがかからない。出生数は90万人割れが確実となっていて、これは推計よりも早いペースだという。このままだと日本経済がさらに悪くなりそうだが、“治療法”はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「中小企業改革」を挙げていて……。
しわ寄せは、弱い立場の下請けに
という話をすると、「規模拡大が目的なら、改革すべきは大企業だ! 最低賃金で人を雇うような小さな事業者をイジメるな!」とどうにかして、自分たちと関係ない方向へ持っていきたい中小企業経営者も多いかもしれないが、先ほども申し上げたように、大企業は日本企業の0.3%に過ぎない。0.3%がどんなに規模を大きくして、どんなに賃金をあげても、日本経済全体への影響は限定的なのだ。
しかも、もっと言ってしまうと、中小企業改革なくして、大企業改革などをやっても意味がない。有給消化率100%、時間外労働ゼロみたいなホワイトぶりが売りの大企業が実はその裏で、業務効率化の名目で、それまでの時間外労働を下請けに丸投げしていることからも分かるように、大企業に対してどんなに生産性向上を迫ったところで、その無理を「下」に押し付けて、真の改革にはならないからだ。
例えば、先日もこんな氷山の一角が露呈した。
LIXILグループ傘下で、「スーパービバホーム」などのホームセンターを展開するLIXILビバが、日用品や大工用品の製造を委託した下請け43社の従業員のべ812人を6100時間以上タダで、売り場の改装や商品の陳列を手伝わせていたことが明らかになったのだ。しかも、宿泊費や交通費も全て自前である。
これを公正取引委員会は下請法違反に当たるとして再発防止を勧告したが、世間の反応は「こんなのどこもやっているでしょ」「氷山の一角に過ぎない」とシラけていた。そう、大企業が効率化やコスト削減を目指すと、下請けの中小企業にそのしわ寄せがいくのは、この国で働く人間にとっては「常識」なのだ。
事実、中小企業庁が2019年2月に公表したアンケートでは、中小企業の6割以上が「納期の短縮」を求められ、7割が「繁忙期が発生している」と回答し、こんな生々しい被害の声も寄せられている。
「取引先の大企業が残業を減らすため、納期が厳しくなった」
「取引先が時短対応のため丸投げが増え、工程の遅れを下請けが取り戻している」
関西電力が、原発立地で反対派を黙らせるなどの汚れ仕事を、森山栄治元助役(故人)に丸投げすることによって、表向きは”身綺麗な大企業”でいられたように、「外」をうまく使えば、「改革」というめんどくさい話を避けて現状維持ができてしまうのが大企業なのだ。
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