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「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いから」は本当かスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

少子化に歯止めがかからない。出生数は90万人割れが確実となっていて、これは推計よりも早いペースだという。このままだと日本経済がさらに悪くなりそうだが、“治療法”はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「中小企業改革」を挙げていて……。

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日本の「非効率な産業構造」

 一方で、このように大企業から無茶振りをされる辛い立場なんだから、最低賃金引き上げなどで余計に苦しめるなという人もいるが、それはまったく逆で、「こういう構造だからこそ最低賃金を引き上げなくてはいけない」のである。

 暴力やハラスメントは水と同じで「上」から「下」へと流れる。親にはいい子を演じるイジメっ子や、上司にヘコヘコするパワハラ中間管理職をイメージしていただければ分かりやすいが、弱者をマウントする者は、その上にいる者からマウントされているケースが圧倒的に多い。実は「労働力搾取」の構造もこれと全く同じだ。

 例えば、大企業がコスト削減のために、これまでよりも大幅に発注額を抑えた仕事を下請けに迫ってきたとしよう。下請けはなかなか断ることができないので、仕方なく首を縦にふる。もし競合がいれば、「ウチはもっと安くできます」「いや、ウチはサービスさせてもらいます」というダンピング競争も始まってしまうだろう。


(写真提供:ゲッティイメージズ)

 では、こういう中で仕事を請け負った下請けはどうするか。安いとはいえ仕事は仕事。少しでも利益を上げたいと思うのは当然だ。そこで出番となるのが、「最低賃金労働者」である。ここで人件費をキュッと圧縮できれば、大企業のムチャ振りもどうにか対応できるというわけだ。

 ここまで言えばもうお分かりだろう。大企業は効率化やコスト削減の無理を、弱い立場の下請けに押し付けて、下請けは利益を生まないブラック労働の無理を、さらに弱い立場である、最低賃金労働者へ押し付ける――。この流れこそが、アトキンソン氏が指摘している日本の「非効率な産業構造」なのだ。

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