「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いから」は本当か:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
少子化に歯止めがかからない。出生数は90万人割れが確実となっていて、これは推計よりも早いペースだという。このままだと日本経済がさらに悪くなりそうだが、“治療法”はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「中小企業改革」を挙げていて……。
「負の連鎖」を断ち切るには
この「負の連鎖」を断ち切っていくのは、弱い立場である最低賃金労働者の地位をあげていくしかない。最低賃金が一律で上がっていけば、全国の中小企業は、大企業からの無茶なリクエストを拒むしかなくなる。そうすると確かに、「時給800円で人を雇えないならもう利益は出ない!」なんていう中小企業は廃業か倒産に追い込まれる。経営者にとってはお気の毒だが、一方でこの経営者に最低賃金労働でコキ使われていた従業員は解放されるので、むしろ喜ばしい話だ。
日本は地方も含めて深刻な「人手不足」なので、選り好みをしなければすぐに再就職はできる。最低賃金の継続的な引き上げで、自然淘汰が進めば、それなりの規模の中小企業が増えるので、生産性も向上するし、労働者の賃金もアップしていくというわけだ。
一方、大企業もこれまでのように下請けに無茶振りができない。「最低賃金が決まっているので、そんな無茶はできません」とまともな中小企業には相手にされない。ブラック仕事を請け負うのは、アウトロー的な違法企業ということになるので、コソコソ裏でやっていれば、今回の関電のように痛いしっぺ返しにあう。
中小企業経営者の団体である日本商工会議所などは、「事業者の自主性に任せるべきだ」と主張しているが、事業者の自主性に任せてきた結果が、「先進国で最低の賃金」と「ブラック労働」であることは動かしがたい事実だ。
それはつまり、労働者という「下」に事業コストを押し付けるスタイルを続けてきた結果が、「失われた20年」をつくったということでもあるのだ。「外国人労働者の活用」や「女性活躍」という新たな「下」をつくろうとしている限りは、「失われた30年」になるのも近い。
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