髪の毛1本で病気を発見? 日本発「毛髪診断」が秘める可能性:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
健康診断には痛みや不快感が伴うことも少なくないが、その概念を変えるかもしれないプロジェクトが日本で進んでいる。「毛髪」の細胞から入手する健康データを分析する取り組みだ。私たちもこの研究に参加できる。日本発の技術が世界を驚かせるかもしれない。
「毛髪による健康診断」のメカニズムとは?
まずこのプロジェクトがどういうものなのか見ていきたい。
もともと、ともすれば絵空事にも聞こえるこの研究を提唱したのは、国立研究開発法人理化学研究所の辻孝氏。生命機能科学研究センター器官誘導研究チームのリーダーである辻氏は、再生医療の研究に長年携わってきた研究者で、毛髪も専門分野の一つだ。また、毛包再生医療の第一人者でもある。
辻氏が、「毛髪には多様な健康データが残されている」という事実に目をつけて、大々的に健康診断に利用するためのプロジェクトを開始しようと考えたのは2016年のことだった。それから企業と話をしながらコンソーシアムを立ち上げる準備を進め、17年から理化学研究所とアデランスやヤフー、京セラ、島津製作所、ダイキン工業、東ソーといった企業21法人と共に「毛髪診断コンソーシアム」というプロジェクトを開始した。
ではこの毛髪による健康診断というのは、いったいどんなメカニズムなのだろうか。
従来の血液や尿による健康診断は広く普及しているが、実は不安定な部分がある。食べたものや飲んだものなどですぐに診断の数値が大きく変動してしまう。
辻氏はそれに注目し、安定した健康指標は毛髪にあるのではないかというアイデアに行き着いたという。辻氏によれば、「髪の毛はそもそも細胞です。髪の毛は毛母という細胞が分裂して、内部にケラチンという繊維がたまって、死んだ細胞の集合体。しかも毛髪はミイラにも残っているくらい安定しており、細胞の標本なのです。髪の毛は、体の状態を表す記憶媒体だと言っていい」という。
辻氏はこう続ける。「毛母は細胞ですが、細胞には細胞膜があって、選択的にしかモノが入っていかないのです。つまり朝食べたものなどに影響されない。だから安定している」
関連記事
- 世界の水源を荒らす、中国の「ペットボトル飲料水」事情
小泉進次郎環境大臣の発言で地球温暖化問題などがあらためて注目されそうだが、「ペットボトル飲料水」の問題も深刻だ。需要拡大に合わせて水をくみ上げる中国企業に、ニュージーランドなどの水源地が反発。できる限り資源を守ることを考える必要がある。 - 日韓関係悪化でも… サムスンが日本企業と組んで開発する「絶対安全なスマホ」
日韓関係が悪化する中、サムスン電子のグループ企業が日本のセキュリティ企業と組んで「セキュリティ特化型スマホ」を開発している。便利になるにつれて、サイバー攻撃の危険性が増しているスマホ。安全性を高める技術とはどのようなものなのか。 - 仕事中の「30分の昼寝」で、パフォーマンスはどれほど変わるのか
「昼寝」の重要性が見直されている。仕事のパフォーマンス向上や、勉強、長時間の運転にも効果的だとされる。睡眠時間がとにかく短い日本でも、企業などで昼寝を取り入れるケースが出てきた。導入を考えてみてはどうだろうか。 - 何分後に雨が降る? 「ハイパー天気予報」が災害大国・日本を救うかもしれない
令和時代も自然災害への警戒が不可欠だ。そんな中、米企業のクライマセルが天気予報の概念を変える可能性があるテクノロジーを開発し、注目されている。従来よりも正確に予測できるという「ハイパー天気予報」とはどんなものなのか。 - スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.