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髪の毛1本で病気を発見? 日本発「毛髪診断」が秘める可能性世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

健康診断には痛みや不快感が伴うことも少なくないが、その概念を変えるかもしれないプロジェクトが日本で進んでいる。「毛髪」の細胞から入手する健康データを分析する取り組みだ。私たちもこの研究に参加できる。日本発の技術が世界を驚かせるかもしれない。

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「痛みのない健康診断」も可能に?

 また、髪の毛が伸びるスピードは、1カ月に約1センチ。根元から1センチには直近1カ月の健康状態が、12センチ先には1年前の健康情報が保存されているという。毛髪の形状や内部に含まれるタンパク質やミネラル、脂質などさまざまな物質の状態を分析することで、健康データを時系列に手に入れることができ、健康状態の把握や疾病の早期発見が期待できる。

 肝がんや乳がんといったがんや糖尿病など、さまざまな疾患は毛髪の組成に異常を起こすことが研究で分かっている。今後は、数多くの毛髪データや病歴、日常の食事や行動などをデータとして蓄積し、ビッグデータを構築することで、より幅広い疾患で、より確度の高い健康診断が可能になると期待されている。毛髪1本で健康状態を知ったり、病気の早期診断ができるというわけだ。

 実は、安定して健康情報を維持している毛髪が持つポテンシャルは大きい。例えば警察はすでにこの特性を活用している。麻薬などの使用の有無を調べるのに毛髪1本から薬物検査をして、覚せい剤の使用を調べているという話を聞いたことがある人もいるだろう。この検査の技法は、実は日本の法医学者が開発したもので、警察以外でも、「マトリ」として知られる厚生労働省の麻薬取締部も活用しているらしい。

 また、毛髪による健康診断は、データとして安定しているだけでなく、非侵襲的な診断法である。つまり注射などで体を傷つけることがない、痛みのない健康診断だ。要するに、前日から食事を制限する必要もないし、採血も検尿も必要なくなるかもしれない。気が向いた時にでも、髪の毛を然るべき機関に送っておけば、健康診断ができてしまう――。そんな時代が来る可能性があるのだ。


研究室の様子

 「それぞれの人が自分自身の正しい健康指標を持って、この診断を手軽に毎日の健康維持に生かせるようにするのが目標」と言う辻氏がこのプロジェクトに期待するのには、もう1つこんな思いもある。「毛髪診断で科学的根拠に基づいて病気を防ぐ手助けをできれば、国民医療費を減らすことができ、本当に重病で苦しむ人に回すことが可能になります」

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