ミニストップ「おにぎり100円」がもたらした“意外な変化”:上げるか下げるか「値決め」最前線(3/3 ページ)
ミニストップが7月に始めた「おにぎり100円」施策。主力商品のおにぎりを最大30円値下げした。開始から3カ月がたち、効果はどれほど出ているのか。また、“100円”という値決めは成功なのか。狙いや現状について聞くと、意外な変化も見えてきた。
これまでのおにぎりの売れ筋は、不動の1位が「ツナマヨネーズ」だった。その次に「紅しゃけ」「昆布」「梅」が続いていた。それが「おにぎり100円」開始後は大きく変わった。1位が「紅しゃけ」になり、次に「ネギトロ」、その後に「辛子明太子」「ツナマヨネーズ」と続く。
なぜ売れ筋商品が一変したのか。その要因は、商品の“旧価格”だ。紅しゃけ、ネギトロ、辛子明太子は値下げ前の本体価格が130円だった。一方、ツナマヨネーズは107円。昆布と梅はそれぞれ102円、116円だった。つまり、値下げ幅が大きく、お得感のある商品を選んで購入する人が多いようだ。
「1個100円」で拡大した、意外な需要
加えて、一部店舗には「想定外の効果」も出ている。地域の祭りなど、催事で配るためのおにぎりとして、“特注”が増えているという。なぜかというと、「1個100円」という分かりやすい価格だからだ。どの種類でも同じ価格であるため、複数の種類のおにぎりを大量に注文しても、事前に計算がしやすい。コストも抑えられる。「意外な需要があった」(竹内氏)ことから、おにぎりを予約できることをPRするチラシを急きょ作った店舗もあるという。
加盟店からは、「客数が目に見えて増えた」「家の近くにあるコンビニではなく、ここ(ミニストップ)に来た、というお客さんがいてうれしい」「久々に活気が出てきた」などと、前向きな意見が多く寄せられているという。
今のところ、「おにぎり100円」は良い効果を生んでいるようだ。竹内氏は「今後は、おにぎりとファストフードの2本柱で立て直していきたい。おにぎりは、年間を通じて日常的に買ってもらえる商品。ソフトクリームやハロハロに続く看板になれば」と意気込む。スープや麺類など、おにぎりとの買い合わせを念頭に置いた商品の品ぞろえを充実させるなど、効果的な仕掛けも考えていく。
「100円」という価格には圧倒的なお得感があり、客を呼び込むインパクトがある。だが、それだけではなく、“分かりやすさ”も大きな要素となっているようだ。「おにぎり100円」は、ミニストップを支える太い柱になっていくのか。今後の展開に注目したい。
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