村上世彰が金融教育を通じて伝えたいこと:村上世彰N高特別授業【後編】(2/3 ページ)
会社の研修の一環として「金融教育」を導入する企業が増えている。社員一人ひとりがお金の知識を付け、家計を安定させ、仕事に集中できる環境を作ることが経営課題にもなっている。そんな中、村上世彰氏は自ら金融教育にかかわり、N高投資部での講義に取り組んでいる。村上氏が高校生に金融教育をする背景、若い時からお金と向き合う意義に迫るとともに授業の内容もお届けする。
何でも自分で見に行くこと
――投資にあたりリスクを判断するには、何を見ると自分なりの判断ができるでしょうか。
今回のようなリスクがない(損をしても自分にリスクはない)ケースは特殊なので、今回のケースに限っていうと、あまりリスクについては考えず、期待値の高いものに投資をして、なるべく多く利益をあげて、なぜ利益があがったのかを見てほしい。逆に、失敗したら、「何で自分は失敗したか」だけを考えてくれることがいいと思います。
一般的に僕の場合は、リスクを考えるときに、どこに失敗するリスクがあるかを考えます。会社の業績が一気に悪くなるとしたらどんな要因があるかとか、もしくは把握している情報が間違っているんじゃないかとかですね。
――村上さんの中で、利益確定や損切りを実行するパーセンテージの基準はありますか。
僕は損切りの決断は早い。これはだめだと思ったときは速攻ギブアップします。例えば一つの投資手法として、10%下がったらやめるという人もいます。僕はそうではなくて、下がったからという理由だけでやめることはしないけれども、自分の想定した通りに進まないなと思ったときにはすぐにやめます。
あとは、何でも自分で見に行くこと。僕はよくやっています。『生涯投資家』(文藝春秋)という本の中にも書いてありますが、昔ホテルなどを所有する会社に投資をしていたころ、よくその企業がやっているホテルに実際に足を運んで、ロビーで長い時間、人の出入りを見たり、実際にホテルに泊まってみたりもしました。その会社の持っている遊園地にもいきました。いまでも、そういうことはものすごくよくやっています。
知りたくなったらとことん勉強するのが僕のやり方です。それで「いいな」と思ったら思いっきり投資をするし、投資した後に「これはダメだ」と思ったときはきっぱり諦めます。
村上氏に影響を与えた人物や作品
――村上さんの投資スタイルに影響を与えた人物や作品は何ですか。
人物は父親ですね。父親のやっていることを見ていたので。投資手法について言うと、僕も2回しか会ったことはないんですが、ヘンリー・クラビスさんという方かな。将来ぜひ読んでほしい本として『〔新版〕野蛮な来訪者――RJRナビスコの陥落(原題は「Barbarians at the Gate」)』(パンローリング)という本があります。映画にもなっています。この話は、KKRっていう会社をやっているクラビスさんという人の現実の話です。このクラビスさんが僕に会いたいって言ってわざわざ日本に来てくれたことがあります。その人には影響を受けたかな。この本や映画はきっと参考になると思います。
――村上さんに、「いい会社というのはどういう会社なのか」を教えてもらいたいです。自分は人材関係で起業したいと思っているんですけど、村上さんが思う「起業するときにはこうやったほうがいい」という助言があれば、教えてもらえるとありがたいです。
この経営者はすごいなとか、この部分がいいなって思うことは、上場していないベンチャー系の企業にはすごくあります。上場しても、経営者がいいところは株価が高いです。
人材関係の業界は、自分にはよく分からないところが多いけど、何かそういうお付き合いがありますか?
――自分は4月に山形から出てきたばかりなので、今からアポをTwitterとかいろんなもので取ったりしてつながっていきたいと思っています。
せっかくだから、失敗してもいいから、そこの会社に投資してみて、「投資をしているのですが、ぜひ一度社長訪問をさせてください」って言ってみたらどうだろう。
それで訪問できたり話が聞けたりしたら、「なるほど」と思う部分がたくさん出るかもしれない。投資としては失敗するかもしれないし、儲(もう)からないかもしれないけれど、きっとすごくいい人生経験になると思う。社長じゃなくても会ってくれる人がいるかもしれない。
例えば孫正義さんは中学生の頃、どうしてもこの人に会ってみたいと思って藤田田さんっていう日本マクドナルドの創業者に会いに行った話は有名です。孫さんが会いに来たっていうことを、僕も藤田さんから直接聞きました。今では、孫さんが藤田さんに会いに行っていなかったら、ソフトバンクはないんじゃないかともいわれているそうです。だから、自分がここだと思うところに行ってみて話を聞いてみたらいいんじゃないかな。すごくいい経験になると思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.