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連載「パラリンピックで日本が変わる」:

陸上の日本記録保持者・為末大がパラリンピックを支援する理由 (1/6)

連載「パラリンピックで日本が変わる」第2回目はパラ陸上選手を支援する400メートルハードル日本記録保持者、為末大さんにインタビュー。為末さんは「東京2020大会のパラリンピックは、オリンピックよりも社会に大きなインパクトを与える」と語る。その真意や「パラリンピックを支援する理由」を聞いた。

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 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、パラ陸上を支援している元陸上選手がいる。スプリント種目の世界大会で日本人として初めてメダルを獲得し、3度のオリンピックに出場した為末大さんだ。男子400メートルハードルの日本記録はいまも破られていない。

 為末さんは2012年の現役引退後、スポーツに関するプロジェクトを行う企業や一般社団法人の代表などを務める一方、国内外のパラ陸上の選手を支援している。「東京2020大会のパラリンピックは、オリンピックよりも社会に大きなインパクトを与える」と語る為末さんに、パラリンピックを支援する理由について聞いた。

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為末大(ためすえ だい)1978年広島県生まれ。Sports×Technologyに関するプロジェクトを行う株式会社Deportare Partners代表。「アスリートが社会に貢献する」ことをめざす一般社団法人アスリートソサエティ代表理事。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著書に『生き抜くチカラ: ボクがキミに伝えたい50のことば』(日本図書センター)『諦める力〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉』(プレジデント社)など(撮影:山本宏樹)

東京2020はパラリンピック選手が健常者を超える大会に

――為末さんは現役を引退した後、パラ陸上の支援を始めたそうですが、現役時代からパラリンピックとの関わりがあったのでしょうか。

 僕の現役時代は、視野が狭かったからかもしれませんが、パラリンピックはまだ注目されていませんでした。現役最後だった12年のロンドンオリンピックに出場した直後に、初めてロンドンパラリンピックを見て、すごく感銘を受けたのがきっかけです。引退後、競技用の義足を作るプロジェクトに参加し、東京2020大会の開催が決まってからは「東京はオリンピックよりもパラリンピックだ」と思い、さらに深く関わるようになりました。

――なぜ「オリンピックよりもパラリンピック」と思ったのですか。

 僕はどちらかというと、スポーツそのものよりも、スポーツが社会に与える影響や、人々の認識をどう変えるのかについて興味を持っています。

 オリンピックで強い印象に残っているのは、1984年のロサンゼルス大会の開会式です。人がロケットエンジンで空を飛んだことが衝撃でした。しかし、あれほど大きなインパクトをオリンピックが与えることは、今後はないのではと思っています。

 その一方で、パラリンピックには未来を感じています。ロンドンオリンピックを目指して3年間アメリカでトレーニングしていた時、義足の選手と練習したことがあります。100メートルでは圧勝するのですが、彼らは勢いがついてそこから速くなるんですね。最初はずるいと思いました(笑)。なぜそう思ったのかを後から考えてみると、彼らがもっと速くなる未来を感じたからだと分かりました。

 東京2020大会は、陸上で言えばおそらく同じ競技でパラリンピアン(パラリンピック選手)がオリンピアン(五輪選手)の記録を上回る初めての大会になるでしょう。その瞬間を見たときに、障害のある人に対する人々の認識が、大きく変わると思っています。

――認識はどのように変わると考えていますか。

 もともとのパラリンピックの文脈は「障害があるのに健常者のように競技ができてすごい」というものでした。それが「健常者にできないことができている」に変わると思っています。この文脈が他のことにも派生して、「障害ってなんだろう」と多くの人が考えるようになり、その結果、障害のある人の能力について社会の認識が変わっていくのではないでしょうか。

 でも実は、オリンピックの陸上選手は、マラソンなどの長距離ではすでに車いすの選手に負けているんですね。そう思わないのは、車いすを使っているので同じ競技という感じがしないからかもしれません。しかし、これが義足の選手ならどうでしょうか。義足の選手がオリンピアンの記録を上回った時、大きなインパクトを与えると思います。

――義足の選手が、オリンピアンよりも速く走ることができるというのは、簡単には想像ができませんが、なぜそのようなことが可能になるのでしょうか。

 義足を使う場合、あるレベルまでは同じ走り方をしていますが、(走り方を)極めて高いレベルになってくると、健常者とは違う技術が入ってきます。簡単な例を挙げると、腕の振り方が縦方向になります。義足をつぶすように、縦方向に走り始めるんですね。

 道具を使うこと、それに(五輪選手のような)走り方の“教科書”が無いことから、健常者とは違った走り方になります。その結果、健常者を上回る記録を出す可能性があるのは、非常に興味深いです。パラリンピックを見ていると、いろいろなことを考えさせられると思います。

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