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陸上の日本記録保持者・為末大がパラリンピックを支援する理由連載「パラリンピックで日本が変わる」(2/6 ページ)

連載「パラリンピックで日本が変わる」第2回目はパラ陸上選手を支援する400メートルハードル日本記録保持者、為末大さんにインタビュー。為末さんは「東京2020大会のパラリンピックは、オリンピックよりも社会に大きなインパクトを与える」と語る。その真意や「パラリンピックを支援する理由」を聞いた。

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東京2020パラリンピックで何が変わるか

――東京2020パラリンピックが社会に与えるインパクトには、どんなことが考えられますか。

 パラ陸上ではレースの後、片手が使えない選手が、ペットボトルを脇に挟んで蓋を開けている姿を見ます。ペットボトルが最近増えている柔らかいものだと、水が飛び出してしまうので、片手でも力を入れずに蓋をあけられる器具を選手たちが自ら開発しています。

 でもよく考えてみると、握力が低下しているのは高齢者も同じですから、蓋をあける器具は、高齢者にも役に立つはずです。他にも、足の不自由な人のいすはどんな形状のものがいいのかを考えたり、器具以外にも、片手で靴ひもを結ぶ方法を編み出したりと、多くの人が助かるモノがたくさん生み出されると思っています。

 このようなイノベーションはニッチなマーケットなのかもしれませんが、かゆいところに手が届くという意味では、すごく日本的な気がします。

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「新豊洲サマーナイトフェス」の東京ガスの展示ブースにて。ペットボトルをシートの上に置き、蓋に器具をつけることで、片手でも力を入れずに蓋を開けることができる
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――パラリンピアンの視点がイノベーションにつながるということですか。

 そうですね。パラリンピアンに東京の街を歩いてもらうだけでも、分かることがたくさんあります。地下鉄の青山一丁目駅は、地下の構造が複雑で、車いすユーザーは電車に乗るためにすごく時間がかかります。

 車いすの動きは分かりやすく言うと、ベビーカーと同じ動き方です。車いすの選手が困る場所は、ベビーカーを押しているお母さんも困る場所になっています。

 つまり、いろいろな人が困難を抱える局面が、障害のある人やパラリンピアンに集約されていると言えます。東京2020パラリンピックを経て、東京が高齢者と障害のある人にとって世界で一番暮らしやすく、訪れやすい街になることは、東京にとって大きな武器になるのではないかと期待しています。

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