苦戦している日高屋への“刺客”!? 増殖を続ける「中華食堂 一番館」の実力に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
新興中華チェーン「中華食堂 一番館」が店舗数を増やしている。商圏が最近苦戦している日高屋と重なる場所もある。デフレ時代に対応するビジネスモデルとは?
ロボットを導入した先見性
このチェーンの経営陣の先見性は、商売を始めてすぐの06年にチャーハン調理ロボットを開発したことにある。ロボットによる調理で、安定した味のチャーハンを出せる体制を構築したのだ。
チャーハン調理機「ロボシェフKVC460」は、業務用厨房の総合商社「エム・アイ・ケー」(さいたま市)と共同開発。エム・アイ・ケーは業務用自動炊飯機、業務用自動洗米機なども販売している。
ロボシェフは、料理人がフライパンを振らなくても材料を投入するだけで本格的なチャーハンがつくれる。今日ではお店の味に匹敵するほどの冷凍チャーハンが、スーパー、コンビニなどで販売されている。これらは、大量生産される商品なので、もちろん工場で機械調理されている。
お店でチャーハン調理機を使用するにしても、食材、味付け、操作を間違わなければ、下手なアルバイトが鍋を振るよりおいしくチャーハンができ上がるのである。
しかも、このロボシェフは炒め物にも対応可能だ。肉野菜炒めやレバニラ炒めなど、中華料理には欠かせない炒め物を、調理ができない素人でも上手に仕上げることができるのである。一番館では、3分以内にどの料理もクイックに提供することを目標にしているが、厨房をロボット化しているからこそできるチャレンジなのだ。
なお、このロボシェフは、有名なラーメンやファミレスのチェーンでも活用されている。
10年以上もコックレスでロボット調理をしてきた蓄積こそ、一番館がローコストで運営できる力の源泉である。そして、低価格の実現、豊富なメニュー構成、クイックな提供にも寄与している。当時から、経営陣が今日のような深刻な人手不足の時代が到来し、日本語もおぼつかない外国人の留学生などに店舗を任せざるを得ない事態を予見していたかどうかまでは分からないが、店舗運営上大きなメリットになっている。
このような経緯から、一番館のメインとなる料理はチャーハンとなっている。つまり、ラーメンが売りの日高屋・幸楽苑、ギョーザが売りの餃子の王将・大阪王将・ぎょうざの満洲などとは差別化されているといえるだろう。
一番館運営会社の公式Webサイトによれば、FCの加盟条件は次のようになっている。法人・個人を問わず、加盟契約金は150万円、保証金は50万円、研修費は30万円で、契約期間は3年。更新手数料が1万円。ロイヤルティーは売上高の2%となっている。月商600万円以上、営業利益20%を目標としているとのことだが、かなりハードルが高い。店舗投資を含め、税抜きで1730万円が標準モデルの初期投資額としている。店舗開発では居抜きの物件を探しているので、コストは抑え目で開業できるという。
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