苦戦している日高屋への“刺客”!? 増殖を続ける「中華食堂 一番館」の実力に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
新興中華チェーン「中華食堂 一番館」が店舗数を増やしている。商圏が最近苦戦している日高屋と重なる場所もある。デフレ時代に対応するビジネスモデルとは?
一番館の死角は?
日高屋を徹底マークすることで伸びてきたように見える一番館に、死角はあるのだろうか。
約400店もの店舗を持つ日高屋の首都圏におけるブランド力は強大であるが、現状は自社店舗が顧客を奪い合う現象にも悩まされており、焼鳥、とんかつなどの業態開発を急いでいる。不採算店の撤退やリロケーションの隙間を突いて、跡地に一番館は出店を重ねてきた。
他にも、「ミスタードーナツ」や「築地銀だこ」の撤退した場所に入ったケースもある。有名チェーンの跡によく入ってくるから、店舗数以上のインパクトを地域の人々に与えている面がある。そうした居抜きの作戦が当たって、知名度が高まってきている。
一般の中華料理店の売り上げにおけるアルコール比率は3%程度とされるが、日高屋では15%くらいある。KVS一番館は非上場であり経営に関して開示していないが、日高屋以上に男性の顧客比率が高いと見受けられる。日高屋以上のアルコールの売り上げは確保したいだろう。1杯100円からと圧倒的にお酒が安いのはもちろん武器だが、味の精度もより高めてほしいものだ。
消費増税で消費者の節約志向は高まっており、地方では一層その傾向が強いのではないか。一番館は日高屋とは違って、関東ローカルではなく全国で勝負したいようだ。その意味では、長野市にある2店の成否が、全国的に広がるかどうかの試金石になるだろう。
そして、気になるのは日高屋の動向だ。日高屋のギョーザも一番館と同じく野菜が前面に出た軽いタッチであったが、このたびのリニューアルで肉の容量が増え、ニンニクのパンチも効いたインパクトがある商品に変わってきた。脂分も減らしてヘルシーに、皮も薄くしてよりパリッとした食感になった。しかも10月末までの期間限定ながら1皿170円のセールを実施中。これを皮切りに逆襲してくるだろう。
果たして低価格中華の“東の横綱”に挑む新鋭は、金星に満足せずにこのまま頂点に上り詰められるだろうか。
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