【前編】食べログはなぜ何年も炎上し続けるのか?:専門家のイロメガネ(5/5 ページ)
たびたび炎上する食べログ。先日も、Twitter投稿を元に有料加盟とレビューの点数操作をめぐる疑惑が話題になっている。炎上が続く根本の原因としては、一番の理由は広告料の存在だ。口コミサイトを名乗りながら広告を売るというは矛盾が内包されている。
コンテンツと広告の切り分けはメディアの生命線
食べログはCGM=コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア、つまり口コミや掲示板などユーザーが作成した情報で成り立つ「メディア」であり、メディアである以上は本来守るべき矜持(きょうじ)が求められる。
新聞や雑誌やテレビ、そしてニュースサイトなどの各種メディアは、そのほとんどが広告収入で成り立っている。そして広告を出すのは企業だ。しかし各種メディアは企業の不祥事をニュースとして伝えることもある。つまり広告主を記事で批判する場合もある。
もし「あのブラック企業を批判しないのは、広告料を受け取っているからだ」などと指摘されたら、そのメディアを誰も信用しなくなる。
数年前に吹き荒れたステマ騒動=ステルスマーケティングは、「お金で買える広告枠」ではなく、本来「お金で買えない枠」、つまり通常の記事やコンテンツの部分を売っていたことが問題となった。外部の影響を受けず、編集部が編集権を守るべき部分をお金で売り渡し、しかもそれをこっそり行う。法的にグレーで、なおかつ読者を裏切る行為でもある(現在まともなメディアはステマを徹底的に排除している)。
星の評価をお金で売るということは、記事の内容をお金で売り渡すステルスマーケティングと同じで、メディアとしての価値はゼロどころかマイナス、つまり詐欺行為と同様になる。
星の売買はステマである
では食べログは広告料で星の評価の変更、ステマ的な行為をやっているのか? これはやっていないはず、ということになる。企業としてあまりにハイリスクだからだ。
現在、食べログのトップページを開くと、利用者が多いであろう「東京」とその下に「銀座」や「渋谷」「新宿」などの地名が表示される。
これらの地名をクリックすると、左から標準・ランキング・口コミ数順・ニューオープン順と4つのタブが並び、それぞれタブごとのルールで飲食店の一覧が表示される。そして最初に表示される「標準」の横には、「【会員店舗優先…」と表示されている。そのすぐに下には「標準」の並び順についてというリンクがあり、「標準」は広告料の支払いが加味された並び順であることが明記されている。
標準の横に付け足された表記は、16年の炎上時に追記されたものだ。標準の掲載順には広告料の支払いが影響しているとメディアの取材で明かし、それは利用者に対して明示しないのか? と取材で問われて、「今すぐに変更する予定はないが、表記などについて検討していく」と回答し、そののちに変更された結果でもある(2016年9月の記事参照)。
当時は、「標準【広告優先】」と広告の文字があったが、現在では「標準【会員店舗優先…」と一目で広告であるとは分かりにくい表記へ後退している。この点も問題だといえる。
【後編】に続く。本日お昼に掲載予定。
執筆者 中嶋よしふみ
保険を売らず有料相談を提供するファイナンシャルプランナー。住宅を中心に保険・投資・家計のトータルレッスンを提供。対面で行う共働き夫婦向けのアドバイスを得意とする。「損得よりリスク」が口癖。日経DUAL、東洋経済等で執筆。雑誌、新聞、テレビの取材等も多数。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」。マネー・ビジネス・経済の専門家が集うメディア、シェアーズカフェ・オンライン編集長も務める。お金より料理が好きな79年生まれ。
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