ホリエモン「お前が終わっている」発言に見る、日本経済が「本当に終わっている」理由:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
ネット上の「日本終わっている」にホリエモンが「お前が終わっている」と反論、発言は賛否を呼んでいる。筆者はここに、日本の賃金水準がもたらす本質的な問題を見いだす。
日本は「先進国」と見なせるのか?
同じ条件の人物でありながら、日本で生活していると貧しい暮らしを強いられるという点においては、「日本終わってますよね」という投稿主の主張にも一理あるということになる。
一連の議論は、言い換えれば、日本を「欧米と同水準あるいはそれに近い水準の先進国」と見なすのか、実はそうではないのかという違いになるだろう。
欧州各国は経済に余力があるため、低所得者に対する支援が手厚く、相対的貧困率も日本よりもはるかに低い。日本では「低所得者は怠けている」という批判も多いが、もし日本の低所得者が怠けているというのなら、欧州の低所得者も同様に怠け者ということになるだろう。
だが欧州の場合には、こうした人たちにも手厚い支援があるので、怠けていても、相応の生活を維持することができる。米国は欧州のような手厚い支援策はないが、それでも人口1人あたりの社会保障費用は日本よりも圧倒的に多く、日本との比較においては米国ですら福祉国家といってよい。
結局のところ、日本を「豊かな先進国」と見なすのであれば、「終わっている」という投稿主の主張は正しく、日本を「先進国」とみなさないのであれば、ホリエモンの方が正論ということになるだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
関連記事
- 「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位――この国の“真に深刻な問題”とは
「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位に。賃金やワークライフバランスで高評価な国が上位となった。一方、全項目で評価の低い日本の本質的な問題とは? - 結婚式場のメルパルク炎上に見る、日本企業特有の「根深い欠陥」とは
結婚式場の口コミを巡りメルパルクが炎上している。同社は声明を出したものの逆効果に。筆者は背景に「日本企業特有」の欠陥を見る。 - 「不景気だとカラムーチョが売れる!?」――知られざるナゾの法則に迫る
湖池屋の独自データで、不景気時にカラムーチョが売れる傾向にあることが判明。消費のメカニズムか単なる偶然か、追った。 - 日本人の出世意欲、アジア太平洋地域で「断トツの最下位」 国際調査で判明
日本人の出世意欲、アジア太平洋地域で断トツの最下位に。パーソル総研の国際調査で判明した。日本のビジネスパーソンの国際競争力に不安も。 - 中高年社員を確実に待ち受ける“絶望への落とし穴”とは 調査で解明
企業でささやかれる「働かない中高年」問題。その背景には個人ではなく構造的問題が。調査から迫ったパーソル総研研究員に直撃。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.