「焼肉ポリス」がお客にダメ出し!? 安楽亭と牛角を脅かす「焼肉きんぐ」の戦略に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
大手焼き肉チェーンの「焼肉きんぐ」が快進撃を続けている。サービスの要となるのは「焼肉ポリス」の存在だ。豊富なメニュー開発力も強さを支える。
郊外では激安の焼き肉店が失速する一方で、勢いを増しているのが「定額で食べ放題」「席で注文するテーブルバイキング」形式の焼き肉店だ。このテーブルバイキングのファミリー焼き肉市場を切りひらいてきたのが「物語コーポレーション」(愛知県豊橋市)の運営する「焼肉きんぐ」である。
店舗数は全国で228店(直営:138店、FC:90店)まで増えてきた。5年前の2014年6月末には82店だったので、3倍近く成長したことになる(19年10月28日現在)。
今回は焼肉きんぐのビジネスモデルに迫る。
激安の安楽亭は苦戦
焼肉きんぐでは、コースを注文した顧客のほぼ全てが注文するという「きんぐカルビ」など、ボリューム感たっぷりの4大名物を前面に打ち出す。一方、豊富なサラダ、キムチ、麺類、ごはん類、デザートまでそろったサイドメニューを提案。子どもからシルバー層まで飽きさせない、バラエティに富んだ厚みのあるメニュー構成を誇る。
価格面を見ると、食べ放題のコースでは「幼稚園児以下無料・小学生半額」となっており、無料または割引となる年齢層が広く、食べ盛りの子どもを連れて来店するハードルが低い。60歳以上も500円引きであり、シニア・シルバーのお財布にもやさしい。
サービス面では、客席を回って焼き肉のおいしい焼き方・食べ方を伝授する「焼肉ポリス」が巡回。焼肉ポリスの“おせっかい”によって、顧客とのコミュニケーションを密にし、ちょっとした焼き肉の知識が得られるお得感を演出している。
このように、単に安いだけではなくて、外食でしか体験できない焼き肉の楽しさを伝えようという意欲が感じられるのが焼肉きんぐの魅力だ。
10月からの消費増税によって、同じように肉を売っても、小売は8%に据え置かれるのに対して、飲食店は10%となった。だからこそ外食は、家庭では実現不能な体験を訴求することがますます重要になっている。
焼肉きんぐの成功に刺激されてか、新規プレーヤーの参入が相次ぐ。大阪出身の「ワンカルビ」(経営:ワン・ダイニング)、焼肉屋さかいの新業態「肉匠坂井」(経営:ジー・テイスト)といったテーブルバイキング式のファミリー焼き肉チェーンが登場。「安楽亭」をはじめとする激安の焼き肉チェーンが苦戦しているのとは対照的だ。
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