「焼肉ポリス」がお客にダメ出し!? 安楽亭と牛角を脅かす「焼肉きんぐ」の戦略に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
大手焼き肉チェーンの「焼肉きんぐ」が快進撃を続けている。サービスの要となるのは「焼肉ポリス」の存在だ。豊富なメニュー開発力も強さを支える。
顧客が陳列された肉を取りに行くスタイルが多かった
物語コーポレーションの19年6月期における焼肉部門直営店の売上高は300億8200万円(前期比11.0%増)。売り上げの増加率を見ると、18年で同11.9%増、17年で同9.7%増、16年で同13.1%増と、平均すれば10%をやや上回る水準で毎年コンスタントに伸びている。焼肉きんぐは物語コーポレーションの成長エンジンだ。
物語コーポレーションの19年6月期決算(連結)は、売上高589億9200万円(前年同期比13.0%増)、営業利益39億3000万円(同17.1%増)、経常利益46億9000万円(同21.2%増)であった。14年連続増収増益である。
「会社としては焼肉きんぐに依存しない体制構築が経営課題となっている」(物語コーポレーション焼肉事業部事業部長兼事業推進グループ長・山口学氏)ほど焼肉きんぐは大当たりのヒットとなった。
焼肉きんぐ1号店は、2007年3月にオープンした石川県野々市市の御経塚店である。金沢郊外にあって、近くにイオンやニトリといった集客力の高い商業施設がある。
当時はBSE問題が収束に向かっており、03年12月から続いていた米国産牛肉の禁輸を日本政府が06年7月に解いた。焼き肉業態もリスタートの機運で盛り上がっていた。
では、なぜ焼き肉食べ放題だったのだろうか。
物語コーポレーションの創業は1949年。愛知県豊橋市におでん屋「酒房源氏」を出店したことに始まる。95年に豊橋市にオープンした「焼肉一番かるび」によって焼き肉業態に進出。当時、郊外で広い駐車場を持つファミリー向けの大衆焼き肉店は、大変珍しかった。この頃はファミリー焼き肉の草創期にあたる。ちなみに「牛角」の創業は96年だった。
当初は他に競合もなかったので、焼肉一番かるびは家族や大人数の利用で繁盛していたが、だんだんと類似店が増えて差別化しきれなくなってきた。
そこで考え付いたのが、オーダーバイキング形式だった。それまでは、肉が陳列されている場所に、顧客がお皿を持って取りに行き、席で焼いて食べるセルフ方式の焼き肉食べ放題は存在していた。一方、焼肉きんぐでは、席に座って店員に肉や料理を持ってきてもらう方式を採用。より鮮度の高い肉が提供可能で、サービスを重視したスタイルをアピールした。
しかし、実際にオープンしてみると、客席で注文するブザーが押されまくって、ピンポンの音が店内にあふれるようになってしまった。店員は多忙を極め、オペレーションがうまく回らない事態に陥った。
そこで、タッチパネルを導入すると混乱は収拾した。オープンした翌年、08年のことだった。他にもオーダーバイキング形式の焼き肉店はあったが、タッチパネルを活用する洗練されたシステムによって、焼肉きんぐは差別化を実現して成長を続けた。
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