五輪マラソンはどうなる? 無謀なプロジェクトでコケる組織、3つの「あるある」:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
IOC(国際オリンピック委員会)が、東京2020のマラソンと競歩の開催地を札幌へ変更すると言いだした。東京都は地元開催を訴えているが、無謀なプロジェクトでコケる組織の香りがぷんぷん漂っているのではないか。どういう意味かというと……。
そりゃそうなるわな、と納得した人も多かったことだろう。
IOC(国際オリンピック委員会)が、東京2020のマラソンと競歩の開催地を札幌へ変更すると言いだしたのだ。
「こんないい加減なことをしていると、もう五輪に手を挙げる都市がなくなるぞ」と小池百合子都知事ばりにIOCへの怒りをあらわにしている方たちもいらっしゃると思うが、実はこういう結末になる「伏線」がちょっと前からバンバン出ていた。
例えば、さる9月15日、五輪マラソンのテストにあたるマラソングランドチャンピオンシップが開催され、東京都は「暑さ対策」に生かしていきます、みたいなことを言っていたが、本チャンは猛暑の8月6日。当日のコンディションに近い今年8月15日、五輪の女子トライアスロンのテスト大会が開かれたが、そこではフランス代表選手が脱水症になって、救急車で緊急搬送されている。このままマラソンを強行すると、どういう惨状となるかが予感されるテスト結果となった。
また、8月30日の日本スポーツ健康科学学会では、東京農業大の樫村修生教授が国や東京都が「暑さ対策」と胸を張る「遮熱性舗装」の効果が疑わしいという研究を発表。この舗装にすれば路面温度が上昇せず、ランナーも快適という触れ込みだったが、低くなるのは「路面」だけで、そこを走る人間が味わう温度は普通のアスファルト道路よりも高くなるというのだ。
こんな調子で、かなり雲行きが怪しくなってきたところへトドメを刺したのが、ドーハの世界陸上だ。日本と同じく高温多湿と知られるかの地も、日本と同じく競技のスタート時間を繰り上げるという「暑さ対策」を採用して深夜スタートにした。が、結果は死屍累々で、なんと出場選手全体の4割に当たる28人が途中棄権する事態となったのだ。
テストもダメ、「涼しい道路」も怪しい、そして東京都が最後の切り札にしていた「競技スタートの繰り上げ」も「ドーハの悲劇」によってあまり意味がないことが証明された。ここまでマイナス材料がそろっているにもかかわらず、マラソンと競歩の東京開催を強行すれば、国際社会から「選手を殺す気か」「観客やボランティアも危険だ」などという批判が殺到するのは目に見えている。
もしドーハ以上の惨事を招けば、開催地だけではなく運営側の責任問題にも発展する。そういう意味では、IOCが「札幌開催」へ転換したのは当然というか、国際的な商業イベントを仕切る者として極めて真っ当な判断なのだ。
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