五輪マラソンはどうなる? 無謀なプロジェクトでコケる組織、3つの「あるある」:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
IOC(国際オリンピック委員会)が、東京2020のマラソンと競歩の開催地を札幌へ変更すると言いだした。東京都は地元開催を訴えているが、無謀なプロジェクトでコケる組織の香りがぷんぷん漂っているのではないか。どういう意味かというと……。
東京都の威信をかけた巨大公共事業
まず、(1)の「シナジー効果を過度に期待するあまりビジョンや目標が派手になりがち」はビジネスパーソンならば、一度や二度は経験済みの「あるある」だろう。
この会社を買収すればこういうシナジー効果が得られるとか、新規プロジェクトを立ち上げると、既存事業にもこういうプラスの効果がある、みたいなことをプレゼンなどではあたり前のように使われるが、その多くはすべてがトントン拍子で成功していくことを前提とした希望的観測であることが多い。
このご都合主義的な考えは、今回のマラソンの東京開催にもチラチラと見え隠れする。例えば、開催決定直後に環境省はこんな壮大なビジョンを東京都へ託している。
『第18回東京大会のマラソンコースとして利用された甲州街道には、大会を記念して植えられた欅が50年の時を経て立派な並木に成長し、「オリンピック・レガシー」の一つとなっているように、今大会のマラソンコースの重点的な緑化をはじめ、オリンピック会場周辺の多くの緑地を一つの生態系コリドーと考え、不足分を補いつつネットワーク化していくことも考えられる』(2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を契機とした環境配慮の推進について 平成26年8月 環境省)
また、マラソンコースは前回の東京五輪と異なり、東京都心の観光名所を巡っているが、これは東京の魅力を世界に発信する目的だからだという。
要するに、東京都にとって五輪マラソンは、単に世界中のランナーに快適に42.195キロ走らせておしまい、というわけではなく、「道路整備」「沿道の緑化整備」「観光PR」など多くのシナジー効果をもたらすという大義のもとで、膨大な予算をつぎ込める極めて都合のいい「巨大公共事業」だったわけだ。
断っておくが、このようなシナジーを期待するのがいけない、と言っているわけではない。本来の目的を上回るほどこれも、あれもという感じでシナジーへの期待を大きくしすぎると、頭がのぼせ上がってしまって、今回の東京都のように、冷静かつ客観的に自分たちを見れない組織になってしまうと言いたいのだ。
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