スバルはこれからもAWD+ターボ+ワゴン:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
スバルは東京モーターショーで新型レヴォーグを出品した。レヴォーグはそもそも日本国内マーケットを象徴するクルマである。スバルは、日本の自動車史を代表するザ・ワゴンとして、レヴォーグはGTワゴンという形を死守する覚悟に見える。
レヴォーグのスタイル
さて、最後にレヴォーグのデザインだ。真横から見た全体のシェイプは、ドライバー頭上を頂点に後ろに下がっていく流線型で、それはサイドウィンドーのオープニングラインのみならず、実際のルーフも後ろ下がりだ。
これが意味しているのは、ワゴンの立ち位置の修正である。かつてのレガシィ・ツーリングワゴンは、ほとんどのモデルがルーフラインを情け容赦なく真っ直ぐ後方に引っ張るワゴンの王道デザインだった。いうまでもなく後席の頭上空間と荷室の容量を優先すれば、クルマの形はそうなる。そこにわずかながら変化が訪れたのは5代目の時で、ルーフはともかく、サイドウィンドーのオープニングラインを後ろ下がりに構築し、スタイルにクーペ的要素を持ち込んだ。
そして初代レヴォーグでそのルーフラインの後ろ下がりが明確化していくのだ。当然これはSUVの影響が絶大で、車高の高いSUVの場合、室内のエアボリュームで見ても荷室の空間で見ても有利なのは明らか。ワゴンは、そこで敵わないことを織り込みながら立ち位置を決めなくてはならない。
東京ショーでお目見えした新型レヴォーグのサイドビューは、相当明確にクーペ的だ。エンジニアが本気で最大のラゲッジスペースを取ろうと考えていたらこうはなっていないはずだ。だからスバルがGTワゴンを死守するといっても、全く何も変わらない過去をひたすらキープしようとしているわけではない。それは新しいスペシャリティの形としてのワゴンだ。スバルの場合、そもそもSUVのフォレスターがとことん実用を意識したラゲージを備えており、SUVはスペシャリティを志向していない。そしてその部分を担う重要な役割が与えられたのが新型レヴォーグなのだ。
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